「オンライン離婚調停」は正式な手続名ではなく、離婚に関する調停や話し合いをオンラインで行う場合に使われることがある表現です。
具体的には、家庭裁判所の離婚調停にウェブ会議で参加する場合と、ADRなどの民間機関を利用してオンラインで話し合う場合があります。
この記事では、オンライン離婚調停の基本を整理しながら、民間ADRをオンラインで利用して離婚条件を話し合う場合と、家庭裁判所の離婚調停にウェブ会議で参加する場合の違い、向いているケース、選ぶときの確認ポイントを解説します。

オンライン離婚調停とは?まず2つの方法を整理

オンラインで離婚に関する調停や話し合いを進める方法は、大きく分けると、家庭裁判所の離婚調停にウェブ会議で参加する方法と、民間ADRをオンラインで利用する方法があります。
どちらもオンラインで話し合える点は共通していますが、手続きや費用、合意後の扱いなどは異なります。
まずは、それぞれの違いを確認しておきましょう。
家庭裁判所の離婚調停にウェブ会議で参加する方法
家庭裁判所の離婚調停では、事情に応じてウェブ会議で調停に参加できる場合があります。
オンラインで参加できる場合でも、手続き自体は家庭裁判所の家事調停であり、裁判官や調停委員が関わりながら話し合いを進めます。
ただ、希望すれば必ずウェブ会議で参加できるというわけではありません。たとえば、相手と同じ空間にいると安心して話せない場合や、遠方に住んでいて家庭裁判所へ出向くことが難しい場合など、家庭裁判所が相当と認めるときにウェブ会議を利用することが可能です。
民間のオンライン離婚調停(ADR)を利用する方法
もうひとつは、ADRなどの民間機関を利用して、オンラインで離婚に関する話し合いを進める方法です。
ADRとは、裁判所の手続きによらず、公正中立な第三者が当事者の間に入り、話し合いによる解決を目指す手続きです。裁判所の手続きではありませんが、夫婦だけでは冷静に話し合いにくい場合に、第三者のサポートを受けながら合意形成を進められる点が特徴です。
オンライン離婚調停(ADR)と家庭裁判所の離婚調停の違いを比較

オンライン離婚調停(ADR)と家庭裁判所の離婚調停は、どちらも離婚条件について話し合い、合意による解決を目指す方法です。
ここでいうオンライン離婚調停(ADR)は、民間ADR機関などを利用して、オンラインで調停や話し合いを行う場合を指します。一方、家庭裁判所の離婚調停は、家庭裁判所で行う家事調停手続きで、裁判所に出向く場合だけでなく、事情に応じてウェブ会議で参加する場合もあります。
ただ、裁判所とは別の手続きか、家庭裁判所の手続きかによって、進め方や費用、手続きに関与する人、合意後の扱いは変わってきます。
まずは、主なポイントを表で整理してみましょう。
| 比較項目 | 民間ADRでオンラインで利用する場合 | 家庭裁判所の離婚調停 |
|---|---|---|
| 手続きの位置づけ | 裁判所外で話し合いによる解決を目指す手続き | 家庭裁判所で行う家事調停手続き |
| 関与する人 | 調停人・あっせん人など | 裁判官・調停委員など |
| 進め方 | サービスによって同席・別席を選べる場合がある | 当事者が別々に話を聞かれながら進むことが多い |
| 費用 | 利用する機関やサービスによって異なる | 収入印紙1,200円分と連絡用郵便切手などが必要 |
| 期間 | 日程調整や相手の参加状況によって変わる | 争点や期日調整の状況によって変わる |
| 合意後の扱い | 合意内容を書面に残せる場合がある | 合意すると調停調書が作成される |
| 向いているケース | 柔軟に話し合いの場を作りたい場合 | 裁判所の手続きとして離婚条件を整理したい場合 |
それぞれの違いをもう少し詳しく見ていきましょう。
手続きの位置づけ
民間ADRをオンラインで利用する場合は、家庭裁判所を通さずに、民間の調停機関を利用して離婚条件を話し合います。夫婦だけでは冷静に整理しにくい内容を、調停人が間に入って進める点が特徴です。家庭裁判所に申し立てる前の段階で、話し合いの場を作りたい場合にも選択肢になります。
一方、家庭裁判所の離婚調停は、家庭裁判所で行う家事調停手続きです。離婚するかどうかだけでなく、親権、養育費、親子交流、財産分与、年金分割、慰謝料などについても話し合うことができます。
両者の大きな違いは、裁判所外の手続きとして進めるか、家庭裁判所の手続きとして進めるかという点です。
話し合いの進め方
民間ADRをオンラインで利用する場合は、同じオンライン上で夫婦が話す形式のほか、直接やり取りを避けて別々に話を聞いてもらえる形式が用意されている場合もあります。相手と顔を合わせることに不安がある場合は、同席か別席か、どのように調停人が間に入るのかを事前に確認しておくとよいでしょう。
家庭裁判所の離婚調停では、当事者が別々に話を聞かれながら進むことが多く、相手と直接話さずに手続きを進められる場合があります。オンラインで参加できるかどうかだけでなく、相手とどのような距離感で話し合うのかも、比較するときの大きなポイントです。
費用
民間ADRをオンラインで利用する場合は、申し込み時、話し合いの期日ごと、合意書を作成するときなど、段階ごとに費用がかかる場合があります。利用前には、どのタイミングでどのくらいの費用が発生するのかを確認しておきましょう。
家庭裁判所の離婚調停では、申立ての際に収入印紙1,200円分と連絡用郵便切手などが必要です。郵便切手の金額は裁判所によって異なるため、申立先の家庭裁判所で確認しましょう。
なお、どちらの方法でも、弁護士に相談・依頼する場合は別途費用がかかることがあります。手続きそのものの費用だけでなく、専門家に依頼する費用まで含めて考えておくと安心です。
期間
民間ADRをオンラインで利用する場合は、家庭裁判所に出向く場合に比べて日程を調整しやすいことがあります。しかし、相手が参加に応じなければ手続きは進みにくくなりますし、養育費や財産分与など話し合う内容が多い場合は、1回でまとまらず複数回に分けて話し合うこともあります。
家庭裁判所の離婚調停も、争点の数や期日の調整状況によって期間が変わります。親権、養育費、親子交流、財産分与などで意見が分かれている場合は、1回の期日でまとまらないこともあるでしょう。
どちらの方法も、期間については、相手の協力度や話し合う条件の多さもあわせて考える必要があります。
調停人と調停委員の立場
民間ADRをオンラインで利用する場合は、民間機関の調停人などが中立的な立場で話し合いを支えます。調停人は裁判所の職員ではなく、利用する機関の仕組みに沿って、夫婦の話を整理しながら合意に向けた対話を進めます。
一方、家庭裁判所の離婚調停では、裁判官や調停委員が手続きに関与します。調停委員は、当事者それぞれの話を聞きながら、合意できる点を探っていく役割を担います。
合意後の扱い
民間ADRをオンラインで利用する場合は、話し合いでまとまった内容を合意書として残せる場合があります。ただし、合意書の作成方法や効力は、利用するサービスによって異なります。養育費や財産分与など、離婚後も関係する内容を取り決める場合は、どのような書面として残るのかを事前に確認しておきましょう。
家庭裁判所の離婚調停の場合は、合意すると調停調書が作成されます。調停調書には、合意した離婚条件が記載されます。
話し合いの進めやすさだけでなく、合意した内容をどのような形で残せるかも確認しておくことが大切です。
オンライン離婚調停(ADR)が向いているケース

民間ADRをオンラインで利用する方法は、夫婦だけで話し合うのが難しいときや、家庭裁判所に申し立てる前に第三者を交えて整理したいときに検討しやすい方法です。
特に、感情的になりやすい話し合いを落ち着いて進めたい場合や、日程・場所の負担を抑えたい場合には、選択肢の一つになります。
民間ADRをオンラインで利用する方法が向いている主なケースは次のとおりです。
- 夫婦だけでは冷静に話し合いにくい場合
- 家庭裁判所に申し立てる前に第三者を交えて話し合いたい場合
- 日程や場所の負担を抑えて話し合いたい場合
それぞれ具体的に見ていきましょう。
夫婦だけでは冷静に話し合いにくい場合
離婚について夫婦だけで話し合おうとしても、感情的になってしまい、具体的な条件まで整理できないことがあります。
養育費、財産分与、親子交流などは、どちらか一方の希望だけで決められるものではありません。お互いの考えを聞きながら、現実的に合意できる内容を探っていく必要があります。
民間ADRでは、調停人が間に入り、話し合いの流れを整えながら進められます。直接話すと感情的になりやすい場合でも、第三者が入ることで、条件の整理に集中しやすくなるでしょう。
家庭裁判所に申し立てる前に第三者を交えて話し合いたい場合
いきなり家庭裁判所の手続きに進む前に、まずは第三者を交えて話し合いたい場合にも、民間ADRをオンラインで利用する方法は選択肢になります。
夫婦だけの協議では話が進まないものの、いきなり家庭裁判所の手続きに進むことには抵抗がある人もいるでしょう。そのような場合、民間の調停機関を利用して、第三者を交えた話し合いの場を作る方法があります。
ただし、相手が話し合いに応じない場合や対立が大きい場合は、家庭裁判所の離婚調停を検討した方がよいケースもあります。状況に応じて、どの方法が合うかを考えることが大切です。
日程や場所の負担を抑えて話し合いたい場合
民間ADRをオンラインで利用する場合は、日程や場所の負担を抑えやすい点も特徴です。仕事や育児でまとまった移動時間を取りにくい方や、遠方に住んでいて同じ場所に集まりにくい方にとっては、移動せずに話し合えることが負担の軽減につながります。
もちろん、オンラインで参加する場合でも、落ち着いて話せる場所や通信環境は必要です。自宅から参加する場合は、周囲に会話を聞かれない環境を整えておきましょう。
家庭裁判所の離婚調停が向いているケース

家庭裁判所の離婚調停は、裁判所の手続きとして離婚やその条件を整理したい場合に検討される方法です。
相手との意見の違いが大きい場合や、合意した内容を調停調書として残したい場合などは、家庭裁判所の離婚調停が合うことがあります。
家庭裁判所の離婚調停が向いているのは次のようなケースです。
- 相手との意見の違いが大きい場合
- 合意内容を調停調書として残したい場合
1つずつ具体的に見ていきましょう。
相手との意見の違いが大きい場合
離婚するかどうかや、離婚条件について意見の違いが大きい場合は、夫婦だけで話し合いを進めるのが難しくなることがあります。たとえば、親権、養育費、親子交流、財産分与などで主張が大きく分かれていると、話し合いをしても平行線になりやすいでしょう。相手が話し合いに応じない場合や、条件のすり合わせが進まない場合もあります。
家庭裁判所の離婚調停では、調停委員がそれぞれの話を聞きながら、合意できる点を探っていきます。意見の違いが大きく、夫婦だけでは整理しにくい場合、例えば相手の資産を調べるため調査嘱託などの手続を利用したり、子の意向を確認するため調査官調査を求めることも考えられます。その場合、家庭裁判所の離婚調停が選択肢になります。
合意内容を調停調書として残したい場合
家庭裁判所の離婚調停で合意すると、合意した内容は調停調書に記載されます。離婚後も関係する内容は、口約束のままだと後から認識が食い違うことがあります。
合意した内容を裁判所の手続きの中で明確に残したい場合も、家庭裁判所の離婚調停が選択肢になります。
オンライン離婚調停と家庭裁判所の離婚調停で迷うときの確認ポイント

民間ADRをオンラインで利用する方法と家庭裁判所の離婚調停のどちらが合うかは、夫婦の状況によって変わります。
迷ったときには、次の3点を確認してみましょう。
- 相手が話し合いに応じる可能性があるか
- 費用と期間の見通しを確認できるか
- 合意内容をどのような形で残したいか
それぞれ詳しく見ていきましょう。
相手が話し合いに応じる可能性があるか
相手にも話し合う意思があり、第三者が入れば条件を整理できそうな場合は、民間ADRをオンラインで利用する方法を検討しやすいでしょう。
ただ、相手が話し合いに消極的である場合や、連絡しても反応がない場合は、民間ADRだけでは話し合いを進めにくいことがあります。その場合は、家庭裁判所の離婚調停を検討する必要があります。
費用と期間の見通しを確認できるか
民間ADRをオンラインで利用する場合と家庭裁判所の離婚調停では、費用のかかり方や進むペースが異なります。
民間ADRは、利用する機関やサービスによって費用体系や期日の設定が異なるため、事前に総額の目安・追加費用の有無・期日の設定などを確認しておくことが大切です。一般的に、民間ADRの期日は短い間隔で設定されることが多く、夜間や土日に対応できる機関もあります。一方、家庭裁判所の離婚調停は、申立てにかかる費用は比較的確認しやすいものの、調停期日は1~2カ月に1回程度の間隔で設定されることが多く、時間帯も平日昼間に限られます。
なお、民間ADR・家庭裁判所の調停のいずれも、何回の期日でまとまるかは争点や夫婦の状況によって変わります。
費用だけを見るのではなく、期日の設定や日程調整のしやすさや、話し合いが長引いた場合の負担もあわせて考えておくと判断しやすくなるでしょう。
合意内容をどのような形で残したいか
話し合いで決まった内容は、あとから確認できる形で残しておくことが大切です。
民間ADRをオンラインで利用する場合は、合意書を作成できる場合があります。ただ、作成方法や書面の扱いはサービスによって異なるため、利用前に確認しておきましょう。
家庭裁判所の離婚調停で合意した場合は、調停調書が作成されます。養育費や財産分与など、離婚後も関係する内容を決める場合は、話し合いやすさだけでなく、合意した内容の残し方まで含めて考えておきましょう。
民間ADRのオンライン調停と家庭裁判所の離婚調停に関するよくある質問
民間ADRのオンライン調停と、家庭裁判所の離婚調停に関するよくある質問をQ&A形式でまとめました。
違いが分かりにくい部分や、利用前に確認しておきたい点を見ていきましょう。
- 民間ADRでオンライン調停を行う場合と、家庭裁判所のウェブ会議は同じですか?
-
同じではありません。
民間ADRでオンライン調停を行う場合は、ADR機関などを利用して、裁判所の外で離婚に関する話し合いを進めます。一方、家庭裁判所のウェブ会議は、家庭裁判所の離婚調停という手続きの中で、参加方法としてウェブ会議を利用するものです。
- 弁護士に相談しながら利用できますか?
-
民間ADRをオンラインで利用する場合でも、家庭裁判所の離婚調停でも、弁護士に相談しながら進めることはできます。
親権、養育費、財産分与、慰謝料などで意見が分かれている場合は、事前に弁護士へ相談しておくと、整理すべき条件や必要な資料を確認しやすくなります。どの方法を選ぶ場合でも、不安が大きいときは一人で判断せず、専門家に相談しながら進めるとよいでしょう。
- 家庭裁判所の離婚調停もオンラインで参加できますか?
-
事情によっては、家庭裁判所の離婚調停でもウェブ会議を利用できる場合があります。
ただし、希望すれば必ずオンラインで参加できるわけではありません。利用できるかどうかは、申立先の家庭裁判所の判断や案内に従う必要があります。
オンライン離婚調停は家庭裁判所との違いを比較して選びましょう!

ここまで、オンライン離婚調停という言葉の意味や、民間ADRをオンラインで利用する場合と家庭裁判所の離婚調停の違いについて解説しました。
この記事のポイントをまとめると次のとおりです。
- オンライン離婚調停という言葉は、家庭裁判所のウェブ会議参加や民間ADRをオンラインで利用する場合を指して使われることがある
- 民間ADRをオンラインで利用する場合は、民間機関の調停人を交えて離婚条件を整理できる
- 家庭裁判所の離婚調停は、裁判所の手続きとして進み、合意内容を調停調書として残せる
- ADRは、夫婦だけでは話し合いにくい場合や、柔軟に話し合いの場を作りたい場合に検討しやすい
- 家庭裁判所の離婚調停は、意見の違いが大きい場合や、調停調書として残したい場合に向いている
- 選ぶときは、費用、期日設定、進め方、合意内容の残し方を比較することが大切
民間ADRでオンラインにより話し合う方法と、家庭裁判所の離婚調停は、どちらがよいと一律に決められるものではありません。自分たちの状況や話し合いたい内容に合わせて、進めやすい方法を選んでいきましょう。
