
婚姻中に取得した家は「共有財産」とみなされるため、離婚時には、財産分与の対象として公平に分け合うことが必要です。離婚時の家の取扱いは、住宅ローンの有無や名義によって適切な解決策が異なります。
この記事では、家を財産分与する際の基礎知識や具体的な3つの手法、ローンに関する注意点などを詳しく解説します。
この記事でわかること
●離婚時の家の財産分与の基礎知識や分与割合
●財産分与の対象になる家とならない家の見分け方
●離婚時に家を分けるための3つの方法
●住宅ローンの名義変更やペアローン解消時の注意点

弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所(東京弁護士会所属)
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離婚による家の財産分与とは

離婚を検討する際、避けて通れないのが「財産分与」の問題です。財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた「共有財産」を、離婚時に分け合う手続きのことを指します。
預貯金などは金額が明確で分けやすいですが、家などの不動産は評価額の算定や名義の問題が絡むため、非常に複雑です。
ここでは、家の財産分与の基本的な考え方や、対象となる家などについて詳しく解説します。
財産分与の割合は原則2分の1
離婚時の財産分与における分与割合は、基本的には夫婦間で1:1(2分の1ずつ)となります。これは婚姻期間中に得られた財産は、それぞれの収入差やどちらの名義であるかにかかわらず、夫婦の協力によって形成されたとみなされるためです。
例えば、夫が外で働き妻が専業主婦として家事や育児を担っていた場合でも、妻の支えがあってこそ資産が形成されたと評価されるため、原則として半分を受け取る権利があるのです。ただし、例外的に割合が修正されるケースもあります。夫婦の一方がプロのアスリートや会社経営者などで、「特殊な才能や多大な努力」によって数億円単位の莫大な資産が築かれた場合や、一方が家事・育児を著しく放棄していた場合などは、2分の1とは異なる割合が適用される可能性があります。
財産分与の割合は原則2分の1|対象財産や財産分与の割合が変更されるケースについて解説
財産分与の対象になる家
財産分与の対象となるのは、婚姻中に夫婦の協力によって取得した家です。婚姻中に取得された家であれば、名義が単独か共同か、共働きか専業主婦かなどに関わらず、夫婦の「共有財産」とみなされます。たとえ購入資金のほとんどを夫の給与から出していたとしても、その給与自体が婚姻生活の中で得られたものである以上、共有の財産として扱われるのが一般的です。
婚姻期間中であっても、「別居」している場合は注意してください。財産分与の対象期間は、婚姻から「別居開始時」までとされるのが一般的です。そのため、離婚成立前であっても、すでに別居した後に一方が購入した家などは、夫婦の協力関係が解消された後の取得とみなされ、分与の対象外となる可能性があります。
別居婚で離婚する方法と4つのステップとは?財産分与や子供への影響を解説
財産分与の対象にならない家
結婚生活において夫婦が力を合わせて築いたわけではない資産は「特有財産」と位置づけられ、原則として離婚時の清算対象からは除外されます。不動産については、親族などから引き継いだ「相続した家」や、「結婚する前から個人で保有していた持ち家」などが該当します。
相続した家
親や親族から相続によって取得した家は、個人の「特有財産」にあたるため、原則として財産分与の対象から外れます。相続は個人の親族関係に基づくものであり、配偶者の協力によって得られたものではないと考えられるためです。
しかし、例外的に分与の対象となるケースも存在します。例えば、相続した家を夫婦の共有財産から多額の費用を出してリフォームした場合や、賃貸物件を相続した後に夫婦で管理・修繕を行い、その資産価値を維持・向上させた場合などです。配偶者の貢献によって「価値が維持された」あるいは「増加した」と認められれば、その増加分や維持に貢献した部分について、財産分与が認められる可能性があります。
婚姻前から所有している家
結婚する前から夫または妻が所有していた家についても、「特有財産」とみなされるため、財産分与の対象になりません。特有財産かどうかを確認するためには、不動産登記簿や売買契約書などの客観的な書類が証拠として用いられるのが一般的です。
注意したいのは、「住宅ローンの支払い」です。独身時代に購入した家であっても、結婚後に夫婦の収入(共有財産)からローンを返済していた場合、その返済分については夫婦の協力があったとみなされます。この場合、家の現在の価値のうち、婚姻期間中に支払ったローンの割合に応じた金額を算出し、共有財産として分割の対象にする計算が必要です。完全に「対象外」と言い切れないケースも多いため、専門家に確認するようにしましょう。
離婚時に家を財産分与する3つの方法

離婚に際して家をどのように取り決めるかは、その後の生活基盤に直結する重要な問題です。不動産は現金のように単純に切り分けることができないため、大きく分けて「売却して分ける」「どちらかが住み続ける」「貸し借りを行う」という3つの手法から、状況に合わせて選択することになります。
ここでは、それぞれの具体的な進め方やメリット、注意点を見ていきましょう。
1.家の売却金を2人で分ける
家を売却して現金化し、その代金を夫婦で分割する方法は、公平で後腐れのない解決策です。家という大きな資産を整理することで、双方が新生活の準備資金を得られるメリットもあります。
住宅ローンが残っている場合には、「アンダーローン(売却見込額>ローン残債)」か「オーバーローン(売却見込額<ローン残債)」かによって、その後の手続きが大きく異なります。
アンダーローンの場合
アンダーローンとは、家の売却予想価格が住宅ローンの残高を上回っている状態です。この場合は、売却代金でローンを全額返済し、仲介手数料などの諸費用を差し引いた後に残った「手残り金」を、原則2分の1ずつの割合で分け合います。例えば、住宅ローンが2,000万円残っていて、自宅が2,500万円で売却できた場合には、完済後に残った500万円を夫婦間で250万円ずつ分け合うことになります(※実際には、売却にかかる諸費用を差し引いた残額を分割する)。
この方法であれば、住宅ローンが完済されるため、離婚後に返済義務が残る心配がなく、精神的・経済的な負担が軽減されるでしょう。
オーバーローンの場合
オーバーローンとは、家の売却価格よりも住宅ローンの残高の方が多い状態を指します。家を売ってもローンを完済できないため、原則として不足分を現預金などの共有財産から補填して完済しなければ、通常の売却はできません。
財産分与においては、プラスの資産だけでなく、婚姻中に負った債務(マイナスの財産)も考慮の対象です。不足分を補填できず売却が困難な場合は、任意売却を検討するか、売却を断念してどちらかが住み続けながら返済を継続することになるでしょう。
2.一方が取得し、一方が代償金を受け取る
「子どもを転校させたくない」「慣れ親しんだ住環境を維持したい」といった場合には、夫婦のどちらか一方が家を取得し、もう一方がその持ち分に応じた「代償金(現金)」を受け取る方法を検討してください。
これは「代償分割」と呼ばれる手法です。例えば、家の評価額からローン残高を引いた価値が1,000万円で、分与割合が2分の1の場合、住み続ける側が出て行く側へ500万円の代償金を支払います。
住む側は環境を変えずに済み、出て行く側はまとまった引越資金を得られるのが利点です。住み続ける側には、代償金を支払えるだけの資金力が必要になります。また、住宅ローンの名義人が出て行く側である場合は、金融機関の承諾を得て名義変更や借り換えを行う必要があり、審査のハードルが高くなる点に注意が必要です。
3.一方が家を取得し、一方に貸す
自宅の所有権を夫婦の一方が取得した上で、他方が「賃借人」として住み続けるという方法も有効な選択肢です。この方法は厳密には財産分与による清算ではなく、「共有する関係」から「賃貸借契約を結ぶ関係」へと切り替える方法です。例えば、所有権とローンの返済義務は夫が持ち、妻が夫に対して毎月家賃を支払って居住を続けるケースなどが該当します。
賃貸借契約を締結することで、借りる側が借地借家法による保護を受けられる点がメリットです。契約があることで、所有者である元夫が独断で家を売却したり、急に退去を迫ったりするリスクを一定程度防ぐことが期待できます。
元夫婦間での金銭のやり取りが続くため、将来的に家賃の支払いが滞ったり、建物の修繕費負担を巡って揉めたりするトラブルが生じやすいのも事実です。こうしたリスクを回避するためには、弁護士に相談したうえで、家賃・期間・修繕ルールなどを詳細に定めた契約書を作成し、「公正証書」として残しておくことをおすすめします。
財産分与する家の住宅ローンに関する注意点

住宅ローンが残っている家を財産分与する場合、単純に「どちらが住むか」を決めるだけでは不十分です。銀行との契約(金銭消費貸借契約)は、夫婦の事情とは無関係に継続するため、適切な手続きを行わないと契約違反や思わぬ返済トラブルが生じるリスクがあります。
ここでは、住宅ローンの残っている家を財産分与する際に注意すべき3つのポイントを解説します。
必要に応じ名義変更または借り換えをする
住宅ローンは、原則として「債務者本人がその家に居住すること」を条件に融資されています。そのため、離婚によって債務者ではない側(例えば夫名義のローンで妻)が家に住み続ける場合は、住宅ローンの名義変更や借り換えが必要です。金融機関に無断で債務者以外が住み続けることは契約違反とみなされ、ローンの一括返済を求められる可能性もあるでしょう。
対策としては、住み続ける側の名義で新たにローンを組み直す「借り換え」が一般的です。投資用の「不動産ローン」へ切り替えて、所有者(元夫など)に家賃を払って住む方法もありますが、住宅ローンより金利が高くなる傾向です。
住む側に安定した収入がないと、審査に通らないケースも少なくありません。ご自身の収支状況を踏まえ、事前に金融機関や弁護士へ相談することをおすすめします。
離婚時に残る住宅ローンをどうする?ケース別解説とトラブル回避のための総合ガイド
ペアローンは単独ローンへの一本化などを検討する
ペアローンとは、夫婦双方が債務者となって共同で借り入れるローンのことです。離婚後、別々の道を歩むことになっても、銀行に対する返済義務は各自に残ります。そのまま放置すると、一方が返済を滞らせた際にもう一方の資産が差し押さえられるなどのトラブルに発展しかねません。
ペアローンを解消するには、以下の方法が考えられます。なお、所有権の整理と住宅ローンの整理は別の手続きとなりますので、混同しないようご注意ください。
- 単独ローンへの一本化:ペアローンでは互いに連帯保証人となるケースが多く、その場合は、どちらか一方が相手の債務を引き継ぎ、一人でローンを背負い直す方法があります。ただし、一人で全額を返済できるだけの高い年収や信用力が求められ、審査が厳しくなる傾向があります。
- 共同所有:形式上ローンを維持し、離婚後も元夫婦間で家を共有する方法です。しかし、一方が転居すると契約違反とみなされ、金融機関から一括請求を求められる可能性があります。
必要に応じ連帯保証人を解除する
「夫が主債務者」「妻が連帯保証人」という形でローンを組んでいる場合、離婚後にも妻の連帯保証債務は残り続けることになります。もし元夫が返済を滞納すれば、銀行から元妻へ一括返済の請求を受けるというリスクがあります。
このリスクを回避するには、離婚時に連帯保証人の解除手続きを検討してください。具体的な方法としては、「別の連帯保証人を立てる」「実家などの不動産を代わりの担保として提供する」「保証人が不要なローンへ借り換える」といった方法があります。
いずれも金融機関による再審査が必要であり、条件が整わないと認められない場合もあります。連帯保証関係を解消できないまま離婚する場合は、万が一の事態に備え、公正証書で返済の約束を厳格に交わしておくことが不可欠です。
よくある質問Q&A
Q1.家財道具は財産分与の対象?
婚姻生活を送る中で揃えてきた家財道具や電化製品も、原則として財産分与の対象です。ただし、婚姻前から一方が所有していたものや、婚姻中であっても親族から個人宛に贈与されたものは「特有財産」となり、分与の対象にはなりません。
家財道具の分与については、不動産のように売却して現金を分けるよりも、どちらか一方が現物を引き取る形で解決するのが一般的です。多くの場合、離婚後にその家に住み続ける側が大型家電などをそのまま引き継ぎ、退去する側が新居用の購入費用を考慮してもらうといった話し合いが行われます。夫婦間の協議でまとまらない場合は、家庭裁判所の調停などの手続きを通じ、交渉を進めていく必要があります。
Q2.家を売るタイミングは離婚前と離婚後どちらがベスト?
「離婚を急いでいない」あるいは「離婚後に相手と連絡を取りたくない」という場合は、離婚前に売却を済ませるのがベストです。一方、家の売却には数か月単位の時間を要するため、早期の離婚を優先し、かつ離婚後もスムーズに連絡を取り合える信頼関係があるならば、離婚後に落ち着いて売却活動を行う選択肢もあります。
ただし、注意すべきは税制上の特例です。マイホームを売却した際、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる「居住用財産の特別控除(租税特別措置法35条)」がありますが、これは「夫婦や親子など特別な関係にある人」への譲渡には適用されません。例えば、離婚前に夫から妻へ家を譲渡(名義変更)した場合、この特例が適用されず多額の税金がかかるリスクがあります。なお離婚成立後の財産分与による譲渡であれば特例が適用される余地があります。
離婚を検討する際には、これらも加味して配偶者や弁護士と家を売るタイミングを検討するようにしてください。
参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
Q3.住宅ローンのある家の名義変更の費用はどのくらい?
住宅ローンのある家を名義変更する場合、主に「登録免許税」と「司法書士への報酬」、さらに各種証明書の「実費」がかかります。登録免許税は固定資産税評価額に基づいて算出されますが、財産分与による名義変更(所有権移転)の税率は原則2.0%です。
評価額1,000万円程度の家であれば、およそ30〜40万円前後が費用の目安となります。なお、住宅ローンが残っている場合は、名義変更に先立ち金融機関の承諾を得なければなりません。
Q4.家を子ども名義にして離婚後も住み続けられる?
可能です。夫が「妻には財産を渡したくないが、子どもになら譲ってもいい」と考える場合、ローン完済後に名義を子どもへ変更し、それまで母子が住み続けるという解決策があります。子どもが名義人になれば、母親は子どもとの良好な関係を維持する限り、追い出されるリスクなく住み続けられます。
ただし、子どもへの名義変更は「贈与」となるため、原則として贈与税がかかることになります。
Q5.財産分与で家をもらうと贈与税はかかる?
離婚による財産分与として家を受け取る場合、原則として贈与税はかかりません。これは、夫婦が婚姻中に築いた財産の実質的な清算とみなされるためです。
ただし、分与された財産の価値が「過大すぎる」と判断された場合や、税金逃れの偽装離婚とみなされる場合には、例外的に課税対象となる可能性があるため、専門家に相談したうえで進めてください。
※税務上の取扱いは個別事情により異なるため、税理士への確認を推奨します。
家の財産分与に関する悩みは離婚の専門家に相談しよう

離婚時の家の財産分与は、住宅ローンの残高や名義変更、お子様の生活環境の維持など、検討すべき課題が山積みです。自分たちだけで解決しようとすると、感情的な対立が生じたり、将来的なトラブルを見落としたりするリスクがあります。
後悔のない再スタートを切るためには、法的な視点から公平なアドバイスをくれる専門家のサポートが欠かせません。
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