【座談会④】「最低限のつながりを絶たないで」面会交流以前に保障してほしいもの

更新日: 2024年11月01日

子どもの人格形成やアイデンティティの確立に少なくない影響を与える親の離婚。座談会の最後に、親の離婚を経験した当事者として「親が離婚するときに気をつけてほしいこと」を伺いました。

子どもが望む「親が離婚するときに気をつけてほしいこと」

【座談会①】親の離婚の影響は50代、60代になっても……元子どもの声を聴く
【座談会②】うつを発症後、「死んだ」と聞かされていた母親に会って
【座談会③】「やっと会えた」亡くなるひと月前 50年ぶりに父と再会

 

――「離婚の子ども」の視点から、親が離婚をするときに気をつけてほしいと思うことはどんなことでしょうか。

中原:当たり前のことですが、子どものことを大事に思い、子どものことを考えてほしいなということですね。ひと言でいうならこれに尽きると思います。

例えば、子どもの負担にならないように「どうしたい?」と聞いたりね。あとは、仮に一緒に住むことに関しては、選ばれなかったほうの親とも関係が困難にならないように配慮する、などですね。

小林:次男が2年前に結婚したのですが、結婚相手の女性は親が離婚してるんです。彼女の場合は20歳まで親が籍を抜かなかったようで、本人は特別な傷は残っていないといいます。

親が話し合って20歳までは一緒にいることを決めたらしく、別れたあとでもお父さんと当たり前のように会っていて、普通にそういう配慮がされていたようなんです。

もちろん年齢によっては子ども本人では判断が難しいこともあるかもしれませんが、そういうときこそ第三者に助けを求めることが大事だと思います。私の場合、それは叔母でした。親戚でなくとも、支援する第三者がもっと関わるといいなって。

※写真はイメージ(iStock.com/ChayTee)

――一人で抱え込む必要はないわけですしね。最近は地域や社会全体といった「コミュニティ」で子どもを見守ろうとする動きも大きくなっているように感じますね。

中原:そう思います。その観点からひとつだけ、これだけは気をつけてほしいことがあります。それは「最低限の繋がりを絶たないこと」です。

私の場合でいえば「お前のお母さんは死んだ」って言われるような、そういう対応を子どもにするのではなくて、写真を見せて「こういう人だったのよ」と話をしてくれるとか、今どこで何しているといった「基本的な情報や属性」をきちんと伝えて「つながり」を維持してほしい。

※写真はイメージ(iStock.com/kohei_hara)

今はその最低限のことすら保障されないような気がします。よく面会交流が話題になるようですが、会うか会わないか以前に、どこで何をしてるかもわからない、生きているかどうかもわからないという状況がある。面会交流より先に、別れた親の基本情報について保証するべきです。

子どもが自分から別れた親について聞くのは難しいことです。しかし、自分の親がどういう人なのかを知ることで自分に向き合えるかもしれない。そういう繋がりをね、断たないでほしい。

――子どもにとっての両親、つまり別居親の情報をきちんと伝えることは、子どもからすると当たり前に守られるべき権利ですよね。だけど親の一方的な感情だけで情報をコントロールされてしまう現状が容認されているのは、子どもにとってなんて「優しくない世界」なのだろうと思ってしまいます。

中原:私が思うに、離れた親の「こんな暮らしをしている」「元気にしている」という情報は、子どものためだけではなくて両方の親のためになっていると思っています。

子どもが成長過程で自分に起きたことを理解していく中で、離れた親の繋がりを絶たれたことを恨む可能性があります。すると、今度は子どもから同居親との関係を断ち切ってしまうケースがあるのです。これはコミュニティの参加者でもよくあることで、私ははたから見ていて悲劇だなと思います。

――最後に、子どもにとって親の離婚とはどのようなものだと思いますか。

小林:正直にいえば「災害」だと思います。津波で家や家族が流されたとか、原発で被害を受けたとか、今の日本の離婚はそういうのと同じです。でもね、だからといって生きるのは止められないし何とかやっていかなきゃいけない。

私の場合、それであがいてあがいて、ここまで生きてきたという感じがします。「宿命」みたいな。

中原:小林さんの言葉は決して誇張して言っているわけではないと思います。実体験したことをそのまま言葉に表現すると、それだけの出来事になるということ。

もし少しでも「大袈裟な…」と思った人がいたなら、そんな人にほどこの冊子に描かれた「離婚の子ども」たちの声が届いてほしい、そう願わずにはいられません。

 

【座談会①】親の離婚の影響は50代、60代になっても……元子どもの声を聴く
【座談会②】うつを発症後、「死んだ」と聞かされていた母親に会って
【座談会③】「やっと会えた」亡くなるひと月前 50年ぶりに父と再会

冊子はB4判112ページで、税込み千円(送料別)。問い合わせは、「『離婚の子ども』の物語」事務局(rikonnokodomo@gmail.com)へ。

この記事は2024年9月17日に公開しました。

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