【調停体験談】弁護士には聞けない調停のリアル―「消耗戦」を乗り越えるために

更新日: 2025年05月12日

別居と同時に離婚調停・婚姻費用調停を申し立てた30代ワーママの体験談。「円満調停」を勧められ試験的に同居再開するも、問題行動が再燃し子どもに関して不信感を覚える出来事も……。一年にわたる調停期間を「消耗戦」だと語る、離婚調停継続中の記者・加藤あゆみさんのコラム第4回をお届けします。

東海地方に住む離婚調停中の30代ワーキングマザーの加藤あゆみです。現在、地方局の記者として働きながら、二歳の息子を育てています。育児に仕事に目まぐるしい日々を過ごす一方、一年にわたり離婚調停を続けています。実体験に即した離婚に関する情報を発信することで、夫婦問題に悩む方のお役に立てればと思います。

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別居と同時に、弁護士に依頼して、離婚と婚姻費用の調停を申し立てました。途中、夫から懇願され、半年ほど試験的な同居に戻り、円満調停に切り替えるか検討した時期がありました。

しかし、夫の問題行動は改善されず、完全な別居を決意し、離婚調停を継続。さらに、面会交流の調停も同時進行することに。一カ月に一回程度の頻度で、約二時間を調停に費やしています。

夫の理不尽な言動に愕然とすることも多々ありますが、夫婦間の紛争に第三者が介入してくれたことで、客観視することができました。調停は、時間と労力の「消耗戦」です。ただ、最終的なゴールを見失わない強い意志があれば、少しずつ前進していきます。

夫婦の紛争解決へ 離婚と婚姻費用の調停を同時に申し立て

結婚四年目、崩壊した夫婦関係を直視し、幼い息子を連れて別居を開始。同時に、弁護士に依頼して、離婚と婚姻費用の調停を家庭裁判所に申し立てました。受理されると、裁判所から調停期日通知書(呼出状)が夫側にも届きます。その直後の一カ月間は、夫から調停を申し立てたことに対して「許さない」「今すぐ取り下げろ」などの執拗な連絡が続きました。

しかし、次第に「やり直したい」という趣旨の文章が届くようになり「これまでの言動を反省している」という長文の手紙も届きました。そんな中、調停の一回目の期日が訪れました。事前に、弁護士から裁判所に出頭するか、弁護士事務所からオンラインで参加するか選べることを教えてもらい、労力と精神的な負担を考えて、オンラインでの参加にしました。開始時間になると、調停委員の男女2名が進行役となり、交互に双方の主張を聞き取り、話し合いの仲介をしてくれました。

一回目の調停で、夫は「やり直したい」「問題行動を改善する」などと主張し、調停委員は私にも「やり直せる可能性はありますか」というのを確認してきました。夫がこれまでの態度から一変したことに違和感を抱きつつも、家族とも相談し、幼い息子のために試験的な同居生活に戻ることを決意。といっても、離婚と婚姻費用の調停は継続していたので、同居しながら調停を続けるという不思議な状態でした。

同居生活は、大きな問題もなく三カ月が過ぎ、「適度な距離を保てば、離婚しなくても良いのかもしれない」と考えるようになりました。今後の調停の在り方を弁護士に相談したところ「取り下げてしまうと、振り出しに戻ってしまうので、夫婦関係の修復を図るための『円満調停』に切り替えるのも一案です」と教えてもらいました。

円満調停の流れは離婚調停と同じで、調停委員を介して話し合いを進めますが、目的が「離婚」から、「修復」に変わるという仕組み。円満調停というのが存在することを初めて知り、その可能性も視野に「もう三カ月様子をみよう」と決めました。

円満調停を検討するも、夫の問題行動が再開…子の連れ去りの恐怖も

しかし、事態は悪化しました。徐々に夫の不審な行動が再開していき、飲酒や金銭などが絡む問題を頻繁に起こすようになりました。さらに、夫が警察から呼び出され、事情聴取を受ける事案も発生。

これ以上の試験的な同居は難しいと考え、夫に別居に戻る意向を伝えました。その日の夕方、私が仕事から帰宅すると息子と夫の姿がありませんでした。夫に電話やメールをするも、音信不通状態。近所を探しても見つからず、大きな不安が押し寄せました。

深夜になっても帰宅しないため、警察に行方不明の相談をすることに。すると、数時間後、警察から「旦那さんとお子さんを発見しました。ただ、旦那さんの意向で居場所はお伝えできません。安全な場所にいるので安心してください。離婚調停中とお聞きしたので、警察としてこれ以上介入できません」と言われました。想定外の事態に愕然としてしまい、連れ去りの恐怖でその日は全く眠れませんでした。

息子の居場所が分からないまま二日が過ぎると、突然、夫が「息子と二人の生活は難しい」と帰宅しました。元気そうな息子の姿に心から安堵するも、夫に対する不信感や恐怖が増し、離婚を固く決意しました。弁護士や調停委員にも、夫が問題行動を頻繁に起こしたことや、息子を連れ去ったことを報告し、再びの別居と調停の継続を伝えました。

調停では「事実」と「感情」を分けて伝える!妥協点を見出すのも重要

調停は建設的な話し合いの場だと認識していましたが、現実は違いました。夫は提出書類を偽装したり、事実とは異なる主張をしたりして、調停委員を困惑させました。私は夫の主張が事実ではないと証明するため、証拠集めや書類づくりに追われました。

幸い、弁護士が付いていてくれたことで、どんな証拠が有効かというのが明確だったため、最小限の労力で済みましたが、夫の調停の目的が「嫌がらせ」になっているように感じました。

十回以上の調停を重ねたことで学んだのは、調停委員は味方でも敵でもないということです。あくまで、夫婦の合意形成を促す仲介役です。ネット記事には「調停委員を味方につける方法」などもありますが、個人的には味方につける必要はなく、「合意形成を目指す姿勢」を示すことが重要だと思います。

調停委員のゴールと、自分のゴールが一致していることを前提に主張することで、共感を得られる可能性が高まります。そのためには、感情論は避け、基本的には事実をベースにした主張を淡々と繰り返し、時折「これは感情の部分の話ですが」と前置きして、「辛かった」「悲しかった」などの気持ちを伝えるよう意識しました。

調停で必要なのは「妥協点を見出すこと」です。相手を責める場ではないので、早期の解決に向けて譲歩できることを明確にしておくと良いと思います。私の場合、婚姻費用は裁判所の算定表に基づいた金額であれば納得できると伝えました。

また、連帯債務のマンションは売却を希望し、財産分与については目録を細かく作成せず、夫の資産に干渉するつもりはないと主張しました。事前に自分なりの妥協点を見出しておくと、調停でも一貫した主張ができます。ただ、調停委員が「妥協してくれそうな方を説得する」という場面があるので、そこは慎重に見極めて「自分が納得できるか」を基準に判断すべきだと感じます。

婚姻費用の調停は審判移行目前 「裁判官の提案」で終結へ

婚姻費用の調停を申し立てて、約一年が経過した頃、新たな局面に移りました。夫は「勝手に別居したので、払いたくない」という主張で、話し合いが困難な状況が続いていたこともあり、調停委員2名に加え、裁判官が登場しました。

裁判官は「話し合いが進まないようなので、このままでは調停は不成立で審判に移行します。その前に、様々な事情を考慮して裁判所として婚姻費用の額を提案してもいいでしょうか」と言って、算定表に基づきつつ、夫も妥協できそうな金額を提示してくれました。

裁判官と調停委員が夫を説得してくれたことで、やっと婚姻費用の調停は終結。裁判所が調停調書を作成し、未払い分も含めて夫に毎月の婚姻費用の支払いが命じられました。金額が決定したことよりも、気の遠くなるような長期戦の一部が終了したことが嬉しかったです。また、婚姻費用が決まると、毎月の支出が嫌になり、離婚条件の協議も早まるというのが定説なので、今後の離婚調停にも小さな希望を見出せました。

調停は「消耗戦」だが、強い意志があれば必ず前進していく

優先的に進んでいた婚姻費用の調停が終結したことで、「離婚」と「面会交流」の話し合いが本格的に始まりました。離婚条件に関する主張書面に加え、面会交流の実施についての陳述書の作成など、資料づくりが増えました。随時、弁護士に助言を受けながら進めています。

約一年にわたり調停を重ねたことで、調停は時間と労力の「消耗戦」だと痛感します。弁護士に依頼する費用もかかり、定期的に調停に臨むという精神的な負担もあります。ただ、夫婦間の紛争に第三者が介入してくれたことで、潜在的な問題を理解できました。まら、長期戦だからこそ、徐々に相手の本性が表面化していきます。

正直、調停をするまでは、夫婦の問題について「私が気にしすぎているのかもしれない」「我慢すればいいのかもしれない」など考えることもありました。しかし、調停という場で弁護士や調停委員に過去の出来事を論理的に説明すると、夫の異常性をはっきり認識することができました。

弁護士からは「そんな危険なことがあったのですか」「よく、これまで夫婦生活を続けてきましたね」と驚かれることもありました。これまでの夫婦生活が「我慢という土台の上に成り立っていた」ことを理解できたことで、調停という消耗戦を乗り切るための強い意志を持つことができました。

先日、裁判所の公式サイトで「2022年で、裁判所の調停制度は発足100周年」という記事を見つけました。日常生活で調停という制度に触れることはあまり無いと思いますが、困った時のために、制度を正しく理解し、活用する方法を知っておくことは大切です。夫婦の問題は顕在化しにくく、麻痺してしまって正常な判断ができていないことも多いと感じます。そんな時は、紛争を調停という場に持ち込むことで「自分はどう在りたいのか」を自問自答する機会が得られると思います。

 

※この記事は2025年5月12日に配信しました

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