【コラム#4】親子交流がうまくいかない理由とは?共同養育の核となる実践的アプローチ
更新日: 2025年07月04日

親子交流の実現には様々な困難が伴うことも少なくありません。一般社団法人りむすび代表、共同養育コンサルタントのしばはし聡子さんに、数々の支援現場で目の当たりにした「親子交流がうまくいかない理由」から印象深い事例まで解説いただきました。実体験に基づく貴重なアドバイスをお届けします。
親子交流と共同養育の関係
「親子交流」よりも、「面会交流」という言葉の方が馴染みがある方が多いかもしれませんが、「面会」という言葉は警察や病院のような印象があり、親子の関係性にはふさわしくないという認識が広がりつつあります。そのため、最近では「親子交流」という言葉が推奨されるようになりました。
親子交流と共同養育は混同されがちですが、親子交流は共同養育という大きな概念の中の一つ。共同養育とは父母が子育てに関わることであり、親子交流はその実践的な手段の一つなのです。
親子交流がうまくいかなくなる最大の理由
親子交流がうまくいかなくなる主な理由は、総じて親同士の関係が悪いことに起因しています。特に、子どもが別居親との交流に後ろ向きになる多くの場合で、同居親の後ろ向きな気持ちが子どもに伝播している結果です。
例えば、交流の場所や方法について事前のやり取りで対立が生じると、同居親の気持ちが不安定になり、交流日が近づくと緊張したり嫌悪感が増したりすることがあります。それが子どもに伝わることで「(親子交流の場に)行きたくない」という反応につながることがあるのです。
また、毎回同じ場所・時間の交流だと、子どもにとってはマンネリ化してつまらなくなり、「早く帰りたい」と言い出す場合があります。
このような状況になると「子どもが別居親に会いたくないと言っている」と問題視されがちですが、実際は親子交流の約束事を固定化してしまい、子どもの成長や興味に合わせた柔軟な対応ができていないことが根本的な原因となっていることがあります。
親子交流を通して父母の関係が修復した事例
親子交流支援の成功事例として、私の心に残っているケースをご紹介します。
離婚裁判が泥沼化している別居親の男性がいました。その男性は妻を愛しているからと離婚を拒んでいたのですが、カウンセリングの中で「相手が裁判するほど離婚を望んでいるのなら、相手の願いを叶えてあげる勇気も必要ではないか」とお伝えしました。
そうすると、「離婚後、子どもにきちんと会えるなら離婚してもいい」と男性の考えが変わり、親子交流を始めることができたのです。
別居して5年ほど顔を合わせていなかった夫婦だったので、私も親子交流支援者として立ち合い、子ども、夫、妻、そして私の4人で食事をすることになりました。
しばらくすると、驚いたことに、夫婦の会話が自然と始まりました。それを可能にしたのは、妻が「夫が離婚を受け入れてくれた」ことへの感謝の気持ちがあったから。当初の目的は子どもとの交流だったにもかかわらず、過去の懐かしい思い出話を通じて、父母の関係が修復されていったのです。
その結果、「お金ももったいないので親子交流支援は卒業しましょう」ということになり、その後は連絡の仲介支援へと移行する形で親子交流が続きました。
この事例から学んだことは、正論では夫婦問題と親子交流は切り分けて考えるべきではあるものの、実際の現場においては、容易に切り離せるものではないということです。夫婦が揉めている状況で親子交流を円滑に行おうとしても、そこにはさまざまな感情が交差します。
夫婦の問題が解決されない限り、親子交流もスムーズに進みにくい。夫婦間の問題を早期に解決することが、結果的に親子交流を充実させる近道になるのです。
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一般社団法人りむすび:https://www.rimusubi.com/
※この記事は2025年7月4日に公開しました
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