夫婦喧嘩の場や不機嫌なときに、すぐ別れると言う夫がいます。そんな夫に「疲れた」と感じている妻も多いでしょう。頻繁に離婚をちらつかせる夫はモラハラ気質なのかもしれません。すぐ別れると言う夫の心理や、夫がモラハラ気質かどうかを見極めるポイントを紹介します。
すぐ別れると言う夫はモラハラ気質?
夫婦喧嘩になったり、不機嫌になったりしたときに、すぐに別れると言う夫がいます。こんなとき、本当に離婚されたら困ると思い、夫に折れてしまう妻がいますが、これは夫の術中にはまっているのかもしれません。こうした夫の多くは本気で離婚を考えておらず、「別れる」は夫によるモラハラの可能性があります。
すぐに別れると言う夫の心理状態や、夫の言動がモラハラかどうかを見極めるポイントについて紹介します。夫に離婚をちらつかされても、落ち着いて対応しましょう。
すぐ別れると言う夫の心理は?本当に離婚したい?
すぐに別れると言う夫は、どういう気持ちでそんな言葉を発しているのでしょうか。本気で離婚を考えているのでしょうか。代表的な夫の心理状態について説明します。
自分の怒りをわかってほしい
すぐに別れると言う夫は、自分の感情をコントロールできない性格なのかもしれません。感情的になって怒りながら「別れる」「離婚だ」と言っているときは、怒りを抑えきれずに、つい口走ってしまったという可能性が高いでしょう。
こうした場合は、夫の側に特に離婚の理由はありませんし、本気で離婚したいとも思っていません。「離婚したいくらい、今は不機嫌だ。顔も見たくない」くらいの意味だと思っていいでしょう。実際、妻が「本気で離婚したいの」と冷静に聞くと、言葉に詰まり、困ってしまいます。
夫は交際中から、少しでも意見の相違で喧嘩をするとすぐに「別れよう」と言い出しました。結婚してからも喧嘩するとすぐに「もう離婚する」「こんなはずじゃなかった」と言ってきます。
「そんなに簡単に口にする言葉じゃないし、離婚する気もないんだからもう言わないで!」と私が言うと夫はきまって黙りこみます。
「別れたくない」と言ってほしい
すぐ別れると言う夫は、その言葉とは裏腹に「別れたくない」と妻に言ってもらいたいのかもしれません。恋愛漫画などで、彼氏の愛を確かめたくて、わざと「もう別れましょう」などという女性が登場しますが、そんな恋愛の駆け引きと変わりません。いい年をして、乙女チックな旦那というわけです。
こうした夫は、妻に「別れたくない」と言われると安心します。「妻に甘えている面倒な旦那」と思って、機嫌を取ってなだめてあげるといいでしょう。ただ、モラハラ気質の夫は、ここからエスカレートして妻を束縛したい、支配したいと考えるようになるので気を付けてください。
うちの夫は気に入らないことがあると、すぐに離婚話を始めるので疲れます。きっと「嫌だ、別れたくない」って言ってもらいたいだけなんです。いい年して、構ってちゃんなんですよ。
もっと自分に関心を持ってほしい
すぐに別れると言う夫は、結婚後、妻の自分に対する関心が薄れてきていると感じて寂しさを覚えているのかもしれません。子供ができた後、夫との会話やスキンシップが減っていないでしょうか。こうした夫は「離婚する」「別れたい」などと口にすることで、妻の関心を引こうとしています。
子供じみたやり方に面倒だと感じるかもしれませんが、少し我慢して付き合ってあげましょう。「私はこんなことで離婚する気はない。そんな安易な気持ちであなたと結婚していない」などと言って、決して関心が薄れたわけではないことを伝えてあげれば、きっと満足してくれることでしょう。
私がアイドルグループにハマり、休日も推し活しているのに嫉妬したのか「スキンシップが減った、アイドルにしか興味がないんだろう」と不貞腐れて、反発すると別れたいと口に出してきたんです!
どれだけ自分に関心を持ってほしいんだと呆れてしまいましたが「離婚する気はない」ときっぱり伝えたら、その反応に満足しているようでした。
自分に自信を持たせてほしい
妻に認めてもらいたいという気持ちから、すぐに別れると言う夫もいます。こうした夫は、劣等感やコンプレックスが強く、自分に自信がありません。それでいて、虚勢を張りたがるところもあります。
こうした夫は「あなたがいないと家族はどうなるの」「あなたが頼りなんだから」といった答えを求めています。そうした妻の態度を引き出すことで、自分は頼られているという実感を得て、自信を取り戻すのです。他人に認められたいという承認欲求が強いタイプだと言えます。承認欲求が強すぎると、モラハラをするようになることがあるので注意が必要です。
夫は仕事でストレスを感じたときはいつも「どうせ俺なんかいなくても」「お前もこんな面倒な男とは別れたいと思っているんだろう」と言ってきます。自分に自信がないんでしょうね。
落ち込んで卑屈になっている夫に「いつも家族のために頑張ってくれてありがとうと思っているよ」と答えると、安心していつもの夫に戻ります。
自分にすがってほしい
激しい言葉で妻をなじりながら、「別れる」「離婚だ」という夫は、妻が「別れたくない」とすがりついてくることを期待しています。そうやって、自分と妻の力関係を明確にし、夫がいないと一人ではやっていけないと妻に思い込ませたいのです。
こうした言動する夫はモラハラ気質の可能性が高く、妻に精神的なダメージを与え、自分に従わせようとしています。こうした夫の言動を我慢していると、妻は夫の顔色をうかがいながら生活するようになり、しだいに夫に精神的に支配されてしまいます。
元夫は不機嫌なとき、必ず「離婚だ」「両親に離婚を決めたと言いに行かないと」と半ば脅してきました。頼る実家もなく手に職もなかった私は夫に依存していたので、夫の機嫌を損ねないように顔色をうかがいながら生活していました。
すぐ別れるという夫はモラハラ気質?
機嫌が悪くなったり不機嫌になったりすると、すぐに別れるという夫はモラハラ気質の可能性が高いといえます。ただ、必ずしも全員がモラハラというわけではありません。感情的になって「離婚だ」と言ったり、妻に対する甘えから「別れる」と口にしてしまったりすることがあります。モラハラかどうかを見極めるポイントを紹介します。
自分の非を認めない
モラハラ気質の人は自分の非を認めず、自分を正当化する傾向があります。「別れる」「離婚する」と言い出したときに、「お前は間違っている」「俺は悪くない」などと妻を一方的に責め、自分は間違っていないと繰り返すのなら、モラハラ夫である可能性は十分あります。
結婚前から、決して自分から謝ることはなく、自分のミスは棚に上げて他人のせいにする性格が垣間見られたということはありませんか。そうした男性はもともとモラハラ気質だったと思われます。
妻を見下す
「離婚すると言えば、妻は困るはず」と考え、すぐに別れると言う夫は、妻を見下すモラハラ気質かもしれません。妻は自分より劣っていると軽視し、見下した態度を取るのがモラハラ夫の特徴です。
こうしたモラハラ夫は「俺がいないと生活できなくなるぞ」「離婚したら、どうやって生きて行くつもりだ」「子供の親権は渡さない」などと妻を不安にさせながら、「別れる」「離婚する」と妻に迫ります。
「別れる」と言った後、急に優しくなることがある
機嫌が良く優しいときがあるかと思えば、急に怒り出し、すぐに別れると言う夫もモラハラ気質の可能性があります。外面がよく、家の外では愛想よく温厚そうに振る舞うのに、妻の前では態度が一変して怒鳴りちらすというタイプのモラハラもあります。
妻に対して優しくなったり、冷たくなったりと周期的に態度が変わるのもモラハラの特徴で、優しくなる時期を「ハネムーン期」と呼びます。モラハラ夫にとってはアメとムチのようなもので、妻はひどい仕打ちを受けても「本当は優しい人だから」と我慢するようになってしまいます。
妻の粗探しをする
重箱の隅をつつくように、細かな粗探しをするのもモラハラをする人の特徴です。普段から細かなことにネチネチと小言を言い、言い返すと怒りだして「別れる」「離婚する」などと言い出すのであれば、モラハラ夫と言えるでしょう。
モラハラ夫が細かな事をあれこれ言うのは、「自分のほうが正しい」「妻のやり方はダメだ」と言いたいからです。そうして、自分の方が妻よりも立場が上だということを妻にわからせようとします。おそらく、会社でも部下に対して、同じように小さなミスをくどくどと叱責しているに違いありません。
すぐ別れると言う夫に疲れたときの対処法
すぐ別れると言う夫に疲れたときはどのように対応すればいいのでしょうか。特にモラハラ夫を相手にするときは、対応を間違えると、精神的なダメージを受けて洗脳させられてしまうことがあります。しっかり対応して、モラハラをエスカレートさせないようにしましょう。
「本気で言っているの」と聞いてみる
すぐに別れると言う夫には「本気で言っているの」と聞いてみましょう。決して、自分からは「離婚する」とも「別れない」とは言わず、夫が本心から言っているのかどうかを聞きます。それに対し言葉に詰まったり、黙ってしまうようなら本気ではありません。
モラハラではなく、感情的になって発してしまったのなら、そこで我に返り、「そんなつもりじゃない」と言い訳したり、謝ったりするはずです。妻に言い返されたことで、ムキになるようならモラハラの可能性が高いでしょう。この場合は、相手のペースに乗らないよう気を付け、話を受け流すと、妻への攻撃が空回りして夫は困ってしまいます。
理由を聞いてみる
冷静になって夫から別れたい理由を聞くのも、対処法の1つです。もしかすると夫側にも、それなりの言い分があるかもしれません。じっくり夫の言い分に耳を傾けた後、今後どうすればいいのかを話し合って互いに納得できれば、「別れたい」と言い出すことも減っていくでしょう。
この方法も、モラハラがエスカレートした夫には効果がない可能性があります。妻を支配しようとしている夫は、妻に本心を話そうとは思いませんし、話し合いをする気もありません。別れたい理由を聞いても「言わなくてもわかるだろう」「お前には自覚がないのか」などと、さらに怒り出してしまいます。
軽く受け流してみる
相手がモラハラ夫の場合、本心や理由を聞いてもまともな答えは返ってきません。そもそも、自分と妻が対等な関係だとは考えていないからです。自分に質問を投げかける妻に対して「生意気だ」と感じて、怒り出すことでしょう。
こうした夫が「別れたい」「離婚したい」と言っても、相手にせず受け流すのが賢明です。「ああ、そう」「あなたは離婚したいのね」などと言って涼しい顔をしておきます。何らかの反応を期待していた夫は、肩透かしをくらい戸惑うに違いありません。あとは「大きな声を出さないで」「何度も言わなくてもわかるわよ」と適当にあしらっておきましょう。
専門家に相談してみる
すぐに別れると言う夫が、モラハラ気質のようだと思ったら、夫婦問題に詳しいカウンセラーや弁護士に相談するといいでしょう。専門家の立場からのアドバイスを受けられます。モラハラにもさまざまなパターンがあり、専門家の意見を聞くことで、状況にあった対応が取れます。
また、モラハラを受けていると、モラハラの影響で冷静な判断ができなくなっていることもあります。自分のメンタルケアという意味からも、専門家への相談は効果が期待できます。
距離を置いてみる
すぐ別れると言う夫への対応に疲れたという人は、思い切って距離を置いてみましょう。家の中でできるだけ顔を合わせないようにするのもいいですし、それでも夫が何かと文句を言ってくるときは、別居も検討しましょう。
ただ、モラハラ夫は妻を束縛しようとするため、簡単に別居には応じません。時には頻繁に電話をかけてきたり、付け回したりといったストーカーのような行動をすることがあります。不安なときは、事前に弁護士に相談するといいでしょう。
「別れる」と言われて、すぐに離婚はできる?
夫に「別れる」「離婚する」といわれたとき、軽く受け流して放置していても、いきなり離婚されることはないのでしょうか。もし、本当に離婚されたらどうしようかと不安な妻もいるかもしれません。しかし、安心してください。夫が一方的に離婚したり、妻を追い出したりすることはできません。夫が本気で離婚を考えていたらどうなるのかを説明します。
双方の合意がなければ簡単に離婚できない
基本的に離婚は夫婦双方の合意がなければできません。裁判で離婚しようとしても、裁判前に離婚調停をする必要があり、時間も手間もかかります。また、夫婦関係が破綻していることを証明し、裁判所に認めてもらう必要もあります。モラハラをしていた側が離婚を求めて裁判をおこしても、主張が認められる可能性はほとんどありません。
離婚届を勝手に提出されるのではないかと心配な妻もいるでしょう。その場合は事前に役所へ「離婚届不受理申出」をしておけば、離婚届が提出されても受理されません。
また、互いの合意がなく離婚届を提出するのは有印私文書偽造罪などの犯罪行為です。夫が勝手に離婚届を提出して受理されても、妻が家庭裁判所に離婚は無効だと訴えれば、離婚が無効になる可能性が高く、慰謝料を請求できることもあります。そのうえ、夫は刑事罰を受ける恐れもあります。
相手が本気なら弁護士に相談を
すぐに別れると言う夫が本気で離婚を考えている場合、すぐに弁護士に相談しましょう。夫もすでに離婚に向けて準備をしている可能性があります。早く対策を講じないと、離婚の話し合いで不利になるかもしれません。自分に有利になりそうな証拠を確保しておくことも大切です。弁護士のアドバイスに従って準備しましょう。
新大塚法律事務所
離婚を回避したい場合、「夫婦関係調整調停(円満)」(円満調停)という制度もあります。この調停を利用して、夫婦関係の回復を試みるのも1つの方法です。
モラハラ気質の夫は、自分の非を認めない傾向があり、当事者間の話し合いでは解決しない可能性があります。そのような場合に、第三者である調停委員を介して話し合いをする円満調停を利用すれば、多少なりとも夫が冷静になり、夫婦関係を継続するため、自分と向き合うきっかけになるかもしれません。実際に夫婦関係が円満に回復したケースもあります。もし、モラハラ気質の夫であっても、そのような傾向が改善すれば、夫婦関係を継続したいと考えている方は、弁護士などの専門家に相談してみることをお勧めします。
すぐに別れると言う夫はモラハラ気質の可能性が高い
すぐに別れると言う夫は、モラハラ気質の可能性が高く、モラハラの特徴や対処法などを知り、適切に対応することが重要です。モラハラにどうすれば対応すればよいのかわからないときは、弁護士やカウンセラー、自治体や民間団体の相談窓口などの専門家に相談しましょう。
新大塚法律事務所(第一東京弁護士会所属)
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