
財産分与は、対象財産の範囲や評価額、分け方をめぐって意見が対立しやすく、話し合いだけではまとまらないことがあります。離婚を進める前に、弁護士費用の内訳や相場を把握しておくことが大切です。
本記事では、財産分与にかかる弁護士費用の内訳と相場、弁護士に相談したほうがよいケース、依頼するメリットをわかりやすく解説します。
この記事でわかること
●財産分与における弁護士費用の内訳と相場
●財産分与について弁護士に相談したほうがよいケース
●財産分与について弁護士に相談するメリット

弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所(東京弁護士会所属)
2009年の事務所開設以来、女性側の離婚・男女問題の解決に注力しています。年間700件以上、累計5000件以上の相談実績があり、多様な離婚のノウハウを蓄積。
詳しく見る
経験豊富な男女20名の弁護士が所属し、新聞・テレビ・雑誌・Webなど多くのメディアからの取材も受けています。
財産分与の弁護士費用の内訳と相場

財産分与を弁護士に依頼する際の費用は、2004年4月1日に日弁連の旧『報酬等基準』が廃止されて以降、各法律事務所が自由に定められるようになりました。同じ財産分与の相談でも、事務所により定額制・料率制のいずれかが採用されるなど、計算方法は異なります。
もっとも、現在も「弁護士の報酬に関する規程」などを参考にしながら、次のような費用を設定している法律事務所が一般的です。
- 法律相談料
- 着手金
- 報酬金
- 日当
- 実費・手数料
財産分与の弁護士費用は、対象となる財産の額や争いの大きさによって変わりやすい傾向があります。そのため、単に相場を見るだけでなく、どの費用が含まれているのか、追加費用が発生する場面はあるのかを確認しておくことが大切です。
参考:弁護士の報酬に関する規程
法律相談料
法律相談料は、弁護士から法的なアドバイスを受ける際にかかる費用です。基本的には、正式に依頼する前に見通しや進め方、必要な資料などを確認する場面で発生します。
相場は、30分あたり5,000~1万円程度とされることが多く、近年は初回相談を無料としている事務所も増えてきました。ただし、相談時間の区切り方や、初回無料の対象範囲は事務所によって異なるため、予約前に確認しておくことが大切です。
着手金
着手金は、弁護士に財産分与の交渉や調停などを正式に依頼した段階で支払う費用です。事件の結果にかかわらず必要になる費用であり、不成功に終わった場合や、途中で契約を終了した場合でも、原則として返還されません。
金額は事務所ごとの差が大きいものの、離婚調停を前提とした場合は40万円〜50万円前後が目安です。
また、財産分与のように財産的な請求を伴う場合は、別途、経済的利益に応じて着手金が加算されることもあります。
料率制を採用する事務所では、旧報酬基準を参考に、着手金を分与する財産全体の5~10%前後で計算する場合もあります。
報酬金
報酬金は、事件が終了し、依頼した目的が実現した程度に応じて支払う費用です。日弁連は、一部成功の場合はその度合いに応じて支払いが必要になる一方、全面敗訴のようにまったく不成功であれば支払う必要はないと説明しています。
離婚調停に関する報酬金は、40万円〜50万円前後が目安です。
また、財産分与で実際に取得できた金額に応じて、経済的利益の10~20%前後を加算する形を採る事務所もあります。
固定額だけでなく、定額制と料率制を組み合わせる場合もあるため、契約前に計算方法を確認しておくことが重要です。
日当
日当は、弁護士が事務所の外に出て、裁判所への出頭や遠方での手続き対応などを行った場合に発生する費用です。
相場は、半日あたり3万~5万円、1日あたり5万~10万円程度としている事務所が一般的とされています。近距離の移動では日当がかからない場合や、着手金・報酬金に含めている場合もあるため、どの場面で発生するのかを事前に確認しておくと安心です。
実費・手数料
実費は、事件処理のために実際にかかった費用です。たとえば、裁判所に納める収入印紙代や郵便切手代、交通費、通信費、コピー代、記録の取り寄せ費用などが含まれます。これらは、原則として実際に発生した金額に応じて請求されます。
これに対して手数料は、事務的な手続きで発生する費用です。実務上は、内容証明郵便の作成で3万~5万円程度、契約書の作成で5万~10万円程度を目安とする例がありますが、文書の内容や難易度によっても変わります。
財産分与について弁護士に相談したほうがよいケース

財産分与は、当事者同士でも進められます。しかし、対象となる財産の範囲や評価額、分け方をめぐって認識がずれやすく、実際には弁護士に相談したほうがよいケースは多くあります。
特に、財産が多い場合、借金がある場合、相手の資産状況が見えにくい場合は、判断を誤ると不利益が大きくなりやすいため、早めに弁護士からのアドバイスを受けましょう。
夫婦間の話し合いで解決しない場合
財産分与は、夫婦間の話し合いで金額や分け方を決めるのが一般的です。ただし、相手が話し合いに応じない場合や、意見の対立が強くて前に進まない場合など、当事者だけで話し合っても解決しない場合もあります。
特に、感情的になって冷静に話せない場合や、DV・モラハラの影響で直接のやり取りが難しい場合は、無理に二人だけで解決しようとしないほうがよいでしょう。
弁護士が間に入ることで、直接対立する負担を減らしながら、必要な条件を整理しやすくなります。モラハラへの対応が不安な場合は、交渉をすべて弁護士に任せることも可能です。
離婚してくれないモラハラ夫の心理とは?離婚後も怖い?モラハラ夫への対処法も
高額な財産がある場合
預貯金・不動産・有価証券・退職金など、高額な財産がある場合は、財産分与で争う金額も大きくなりやすい傾向があります。分与割合や評価方法の違いによって、受け取れる金額に差が出ることもあるため、早い段階で弁護士に相談しておくことが大切です。
特に、不動産や退職金のように評価の考え方が分かれやすい財産は、当事者同士の感覚だけで決めると不公平が生じるおそれがあります。高額な財産が含まれる場合は、適切な資料をそろえた上で、法的な観点から分け方を検討することが大切です。
ローンや借金がある場合
財産分与では、住宅ローンや教育ローン、自動車ローン、親族からの借入金などがある場合、単純に半分ずつ分ければよいとはいえず、事情に応じて判断しなければなりません。
たとえば、住宅ローンが残っている自宅は、不動産の評価額とローン残高のどちらが大きいかによっても対応は変わります。
借金の名義や使い道、婚姻生活との関係も確認が必要になるため、ローンや負債があるケースほど、弁護士に相談したほうが見通しを立てやすいでしょう。
夫婦共同財産の2分の1以上を取得したい場合
財産分与の割合は、一般的には夫婦それぞれ2分の1ずつが基準です。ただし、2分の1ずつというのは絶対ではなく、個別の事情によっては修正の余地がある割合です。
たとえば、夫婦の一方が家事や育児、就労を一方的に大きく担っていた場合や、特別な能力や努力によって高額な資産が形成された場合は、2分の1を超える取得を主張する余地が生じるケースもあるでしょう。
実際に割合の修正が認められるかどうかは、個別事情にもよります。見込みを含めて、弁護士に確認することが大切です。
財産分与の割合は原則2分の1|対象財産や財産分与の割合が変更されるケースについて解説
資産が把握できない場合
配偶者の預金口座や有価証券、保険、退職金などの内容がよく分からない場合は、財産分与の前提となる資料がそろっていない、もしくは隠されている可能性があります。
たとえば、以下のようなケースでそのまま進めるのは危険です。
- 通帳や証券口座を見せてもらえない
- 給与額のわりに預貯金の状況が見えない
- 別居後に急に生活費の出し渋りが始まった
こうしたケースでは、弁護士に依頼することで、弁護士会照会や裁判所の手続きを通じた調査を検討できる場合があります。すべての財産が直ちに判明するとは限りませんが、自分だけで確認するよりも、把握できる範囲が広がるでしょう。
離婚の財産分与を弁護士に相談するメリット

財産分与は、何が対象になるのか、どう評価するのか、どの手続きで進めるのかを検討しなければなりません。しかし、法律に疎い場合はつまずきやすく、不利益を被るおそれがあります。早い段階から弁護士に相談しておくと、見通しも立てやすくなるでしょう。
ここでは、離婚の財産分与を弁護士に相談するメリットを解説します。
財産分与の対象を正確に把握できる
財産分与では、対象財産の範囲を誤ると、受け取れるはずの財産を見落としたり、逆に対象外の財産まで含めてしまったりするおそれがあります。
弁護士に相談すると、預貯金や不動産だけでなく、保険・退職金・株式なども含めて、何が財産分与の対象になり得るのかを整理しやすくなるでしょう。
子ども名義の預貯金や学資保険、不動産や非上場株式のように評価が難しい財産についても、どの資料をそろえるべきかを含めてアドバイスを受けやすい点は大きなメリットです。
子ども名義の預貯金は財産分与の対象?離婚時の学資保険の扱い方も解説
離婚に関する相談ができる
離婚問題は、養育費・婚姻費用・慰謝料などが同時に問題になるケースも多く、どの順序で何を決めるかによっても、全体の進めやすさが変わることがあります。
たとえば、別居中の生活費を確保したい場合は、婚姻費用分担請求が重要です。未成年の子どもがいる場合は養育費の取決めも避けられません。DVや不貞などがある事案では、慰謝料請求を検討する余地が生じることもあるでしょう。
弁護士に相談すれば、財産分与だけでなく、離婚に伴って生じる関連問題をまとめて検討できるメリットがあります。
精神的な負担を軽減できる
離婚に向けた話し合いは、相手との連絡そのものが大きな負担になることがあります。感情的な対立が強い場合や、相手の反応が読めず不安が大きい場合は、自分だけで交渉や手続きを進めること自体が精神的な負担になりがちです。
弁護士に依頼すると、相手との連絡窓口を一本化しやすくなり、相手の反応を気にしながら対応を続ける負担を軽減できます。心身の消耗を抑えながら手続きを進めやすくなる点は、大きなメリットです。
特に、DVやモラハラが関係していて直接のやり取りに強い不安がある場合は、弁護士を通じて進めることで精神的な負担を軽減しやすくなるでしょう。
よくある質問Q&A
Q1.財産分与の弁護士費用は誰が払うの?
財産分与について弁護士に依頼した場合、弁護士費用は原則として依頼した本人が負担します。弁護士費用は、依頼者と弁護士との委任契約に基づいて発生するため、基本的には相手方に当然に請求できるものではありません。
話し合いや和解の中で、相手に一定の費用負担を求めること自体は可能です。実際に、不貞行為などの不法行為に基づく慰謝料請求では、例外的に弁護士費用の一部が損害として認められるケースもあります。
ただし、全額が認められるわけではなく、実務上は認められた損害額の1割程度が、相当因果関係のある弁護士費用として認められるケースが一般的です。これは、不法行為に基づく損害賠償請求において、事案の難易、請求額、認容額その他の事情を考慮し、相当と認められる範囲の弁護士費用を損害として認めるとした判例に基づくものです。※1
※1最判昭44.2.27(民集23巻2号441頁)
Q2.弁護士費用を払えないときはどうする?
弁護士費用の支払いが難しいときは、まず依頼を検討している法律事務所に支払い方法を相談してみましょう。事務所によっては、分割払いに応じている場合があります。費用面が不安でも、相談時に事情を伝えることで進め方を検討しやすくなるでしょう。
経済的に余裕がない場合は、法テラスの民事法律扶助制度を利用できる可能性があります。法テラスでは、収入や資産が一定基準以下であることなどの条件を満たすと、無料法律相談や弁護士費用の立替制度を利用できます。
法テラスを利用する場合は、依頼できる弁護士の範囲が限られる点に注意が必要です。希望する弁護士が法テラスの利用に対応していないこともあります。
また、弁護士の経験や取扱分野との相性によっては、自分が期待していた対応を受けられない可能性もあるため注意しましょう。法テラスを利用する際は、費用面だけでなく、依頼先の対応範囲や、離婚分野をどの程度扱っているかも確認しておくと安心です。
離婚に向けて財産分与の弁護士費用を把握しよう

財産分与を弁護士に依頼する場合、費用体系は法律事務所によって異なります。金額だけでなく、あらかじめ対応範囲や追加費用なども含めて確認しましょう。
また、財産分与は、対象となる財産の範囲や評価方法、分与割合などが争点になりやすいものです。養育費や婚姻費用、慰謝料など、他の離婚条件とも関わることもあります。不利な条件で進んでしまわないか不安がある場合は、弁護士への相談も視野に入れましょう。
リコ活では、離婚や夫婦問題に関する基礎知識や手続きの考え方を幅広く紹介しています。財産分与を含め、離婚に向けて何を整理すればよいのか迷ったときは、リコ活も参考にしながら、自分に合った解決方法を検討してみてください。
