夫が人の気持ちに寄り添えない..思いやりがなくて疲れた…
他人同士が理解し合うことは難しく、互いに何を考えているのかわからないと感じる場面は多くあります。しかし、夫から思いやりが全く感じられず、気持ちに寄り添う努力も見えない場合は、妻に相当なストレスがかかります。人の気持ちがわからない夫に対して、精神的な病気を患っているのではないかと疑っている妻も多いことでしょう。
完全に理解してほしいわけではなく、ただ気持ちに寄り添ってほしいだけなのに、なぜ夫には、それができないのでしょうか。人の気持ちに寄り添えない夫の特徴やその原因を知り、夫とうまく付き合っていく方法を考えていきましょう。
人の気持ちに寄り添えない夫の特徴【体験談】
人の気持ちに寄り添えない夫にも、いくつかの共通した特徴があります。主な特徴を5つ、妻の体験談とともに紹介します。
自分がしてもらって当たり前だと思っている
家事や育児に限らず、相手から気遣われることさえ当然だと感じている夫がいます。妻が自分のために何かをするのは当たり前だと思っているので、妻が自分を気にかけてくれているということに感謝の念も湧きません。こうした夫は、たとえ妻が体調を崩しても、普段通りに家事や育児をするよう求める傾向があります。
大切な友人が亡くなり、私が悲しみに暮れているときでも、夫は子供の面倒も見ずゲームに夢中。「冷蔵庫におかずがあるから子供に出して」と言うと、「なんで俺がそんなことしなきゃいけないんだ」と激昂してきました。
今までも思いやりがなく、私が病気のときでも家事や育児をさせる人でしたが、私は友人が亡くなった日でも、夫と子供のご飯を用意しなくてはいけないようです。
言葉通りにしか受け取らない
例えば、体調を崩した妻が「今日は夕飯を作れないから、何か買ってきて食べて」と言うと、自分の食事だけを買ってきて一人で食べるような夫がいます。言葉通りにしか受け取れず、「妻の分も買っていこう」という思考にならないのです。
こうした夫は、妻に「疲れた」と言われても妻の気持ちを察するのが難しく、妻の負担を減らすために家事をするなど思いやりのある行動ができません。
私が「疲れた」と言うと、夫は「疲れたんだ」と言うだけで、家事を代わりにやろうとか、楽させてあげようといった思考にならないようです。「疲れたから食器洗って」などと言えばやってくれるのですが、いちいち全部言わなければいけないことに疲れます。
合理主義で感情に起伏がない
合理主義者の夫は、感情より論理的な思考を優先するため、共感力が低く、冷たい印象を与えます。また、うれしい、悲しいなどの感情の起伏が乏しく、人の気持ちに寄り添えない傾向にあります。
妊娠中の私に対して、夫が「障害のある子が生まれたら、一生面倒見るのに必要なお金が足りないから、出生前診断を受けて、障害児だったら中絶しよう」と言ってきました。もともと合理主義者の夫ですが、自分の子供の命まで合理的に考えるとは思いませんでした。
私は「障害児であっても私が必死で働いて一生面倒を見る」と伝えましたが、夫は自分の考えを変えるつもりはないようです。
人に興味がない
もともと人に興味がない性格で、妻の話を聞いたり、共感したりするのが苦手な夫もいます。自分から妻に話しかけることは少なく、妻が話しかけても気のない相づちを打つばかりです。このタイプの夫は、家庭外でも人付き合いが苦手で、職場などで孤立することがあります。
パート先での人間関係に悩み、夫に相談すると、「へぇ」「ふーん」などと言うばかりで、共感もアドバイスもありません。せめて「つらそうだね」の一言でもあれば救われるのですが、何も言ってくれないと私に興味がないのかと感じます。
自分が常に正しいと思っている
自分が常に正しいと思い込み、妻の言動をすべて否定する夫もいます。何事に対しても「お前が悪い」「お前のせいだ」と責めるため、妻は相当なストレスを感じることになります。この場合は、人の気持ちがわからないのではなく、相手より優位に立つために妻にダメージを与えている可能性があり、モラハラに発展しないよう注意が必要です。
子供が忘れ物をしただけで「お前がちゃんとしていないせいだ」と怒鳴り散らす夫。大した忘れ物でもないし、夫自身が子供の荷物を用意したのに私が最終確認しなかったせいだと責め立てるのです。
こういったことが度々あり、おかしいなとは感じていましたが、病院で検査したらアスペルガー症候群だとわかりました。夫は私以外の人にも尊大な態度をとることが多く、対人関係のトラブルをよく起こします。
人の気持ちに寄り添えない夫は発達障害の可能性もある?
夫が人の気持ちに寄り添えないのは、精神的な病気や先天的な障害が原因の可能性もあります。妻に興味がないのではなく、発達障害や精神的な病気により、そもそも人の気持ちがわからないのです。原因として疑われるものを紹介しますので、思い当たる点がある場合は病院で検査を受けてみましょう。
ASD(アスペルガー症候群など)
以前はアスペルガー症候群や自閉症、広汎性発達障害などと呼ばれていた発達障害を、現在は統合して「自閉スペクトラム症(ASD)」と呼んでいます。ASDは生まれつきの脳機能障害で、遺伝的な要因によって起こると言われています。厚生労働省のホームページによると、ASDの具体的な症状は以下のとおりです。
重症度は様々ですが、言葉の遅れ、反響言語(オウム返し)、会話が成り立たない、格式張った字義通りの言語など、言語やコミュニケーションの障害が認められることが多くなっています。
乳児期早期から、視線を合わせることや身振りをまねすることなど、他者と関心を共有することができず、社会性の低下もみられます。学童期以降も友だちができにくかったり、友だちがいても関わりがしばしば一方的だったりと、感情を共有することが苦手で、対人的相互関係を築くのが難しくなります。
また、一つの興味・事柄に関心が限定され、こだわりが強く、感覚過敏あるいは鈍麻など感覚の問題も認められることも特徴的です。
「コミュニケーションをとるのが苦手」「一人でいるのが好き」といった程度ではなく、対人関係で度々トラブルを起こし、社会生活に支障をきたしている場合はASDが疑われます。ASDにはいくつかのタイプがありますが、他人への関心が低い「孤立型」の場合、人の話に興味を示さないため「冷たい人」だと思われがちです。
ASDの夫を持つ妻が、ストレスによって心身に不調がきたすことがあります。「カサンドラ症候群」と呼ばれる症状で、うつ病を発症することもあります。夫にASDと疑われる言動があり、それにストレスや苦痛を感じていたら、早めに病院で検査を受けましょう。
不注意性多動症候群(ADHD)
不注意性多動症候群(ADHD)は発達障害の一種で、集中力がない、じっとしていられない、考えずに行動するなどの行動が特徴です。このため、周囲に合わせられず、場違いな発言をしてしまったり、相手の発言を遮って話しだしたりする傾向があります。感情を上手にコントロールできず、怒りなどの感情を抑えられないため、人間関係のトラブルも起こしがちです。
ADHDについて、厚生労働省のホームページでは以下のように説明しています。
「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められる
自己愛性パーソナリティ障害
自己愛性パーソナリティ障害は精神障害の一種で、自分を誇大評価し、他者を過小評価する特徴があり、思いやりに欠ける言動が目立ちます。自分の業績を誇示したり、著名人との関わりをアピールしたりするため、周囲からは「自慢ばかりする人」だと敬遠されがちです。また、他人を見下しがちで、「人の気持ちがわからない人」だと思われてしまいます。
米製薬会社が提供する医学事典「MSDマニュアル」では、自己愛性パーソナリティ障害について次のように紹介しています。
自己愛性パーソナリティ障害の患者は、自分の価値を過大評価(誇大性と呼ばれる)しています。また患者は自尊心に問題を抱えています。優越感や自尊心を高めるために、患者は以下のことをします。
特別な人物と関わる
優れた機関との関わりをもつ
他者を低く評価する
また患者は賞賛されることを望みます。
自己愛性パーソナリティ障害の有病率の推定値にはばらつきがありますが、おそらくは最大で一般集団の6%にのぼるようです。男性により多くみられます。
人の気持ちに寄り添えない夫の対処法は?
思いやりのない言動を繰り返す夫と暮らしていると、妻はストレスが溜まり、カサンドラ症候群などを引き起こす可能性もあります。人の気持ちに寄り添えない夫と、うまく付き合っていく方法を5つ紹介します。
発達障害や精神的な病気の疑いがあれば精神科を受診する
ASDやADHDなどの発達障害、自己愛性パーソナリティ障害などの病気が疑われる場合は、早めに精神科で検査を受けましょう。夫自身も、他人の気持ちがわからないことに苦しんでいる可能性があるので、「どうして私の気持ちを理解してくれないの」などと責めないよう注意が必要です。
感情的にならない
感情的に夫を責めても何も解決しないので、何がつらいのか、どうして欲しいのかなどを聞き、冷静に話し合いましょう。人の気持ちがわからない夫は、そもそも共感とはどういうものかが理解できていない可能性もあります。
「私がうれしいときに、あなたも喜んでくれると余計にうれしい」「悲しいときは一緒に悲しんでくれると心強い」など、噛み砕いて説明してみましょう。
理解されようと思わない
夫に限ったことではありませんが、他人同士がわかり合うのは簡単ではありません。理解してもらえなくて当たり前と考え、相手に期待するのをやめると、自分が楽になる場合があります。
記録に残して客観的に対策する
自分と夫の会話をノートなどに書き起こすと、問題を客観的にとらえられます。「夫だけでなく自分の言い方にも問題があった」「夫の言葉は冷たく聞こえたけど、本当はこう言いたかったのかもしれない」などの気付きがあるかもしれません。また、将来的に離婚を考えている場合は、会話の記録が妻に有利に働く可能性もあります。
第三者に相談する
自分だけで抱え込まず、信頼できる第三者に相談するのも一つの手です。誰かに相談することで妻のストレスが軽減され、違う目線から夫婦の問題を冷静に見ることもできます。離婚を視野に入れている場合や、夫の言動が発達障害などに起因する場合は、専門のカウンセラーに相談すると確かなアドバイスが受けられるでしょう。
つらいときは一人で抱え込まずに相談してみよう
佐々木 裕介/チャイルドサポート法律事務所・行政書士事務所(第二東京弁護士会所属)
「失敗しない子連れ離婚」をテーマに各種メディア、SNS等で発信している現役弁護士。離婚の相談件数は年間200件超。協議離婚や調停離婚、養育費回収など、離婚に関する総合的な法律サービスを提供するチャイルドサポート法律事務所・行政書士事務所を運営。