別居中にパートナーからの連絡がしつこいと、無視したい感情が湧くこともあるかもしれません。別居中や離婚調停中に相手からの連絡を無視すると、どのようなことが起こるのでしょうか。離婚話の進展を考える中で、別居中の連絡を無視してもよいのか、適切な対処法や子どもへの影響について解説します。
鈴木 秀一/北松戸ファミリオ法律事務所(千葉県弁護士会所属)
ホームページ:https://familio.jp/
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別居中に連絡を無視し続けると不利になる?
別居中に配偶者から電話やメールなどでしつこく連絡が続くと、無視し続けたくなるかもしれません。別居中に連絡を無視し続けると、法的に不利になるのでしょうか。
法的に不利になることはない
別居中に配偶者からの連絡を無視し続けることは、法的に不利になることはありません。今後の離婚調停を弁護士に依頼する場合、無視し続けるのではなく、配偶者に「依頼した弁護士から連絡する」と伝えるべきでしょう。
ただし配偶者の弁護士からの連絡を無視すると不利になる可能性も
配偶者の弁護士からの連絡を無視すると、法的に不利になる可能性があります。配偶者の弁護士からの連絡は、離婚や慰謝料といった問題が発生した場合に行われます。このような場合には、弁護士からの連絡に対応しないと、配偶者側の法律的な主張を知らないまま事態が進んでしまうことで、不利になる可能性があるからです。

離婚調停中に連絡を無視し続けるとどうなる?
別居中にもかかわらず、配偶者本人からの連絡がしつこい場合、無視しても不利になることはありません。では、離婚調停中に連絡を無視し続けると不利になるのでしょうか。

不利になることはない
離婚調停中に連絡を無視し続けているからといって、法的に不利になることはありません。離婚調停中の結果に影響があるわけでもないです。

当事者同士では解決できず調停という段階にまで至っている以上、自分の主張は調停の場で話すとして、当事者同士で調停中に連絡を取らないことも十分理由があるといえます。
ただし最低限の連絡は返事した方が良い場合も
ただし、離婚調停中に連絡でも配偶者からの最低限の連絡には、返事した方が良い場合もあります。たとえば、子どもの面会に関する要望や、生活費の支払いに関する問い合わせなどは、無視せずに返事をすることが望ましいでしょう。ただし連絡を取り合った際は、次の調停の際に調停委員にもその経緯を伝えておきましょう。また離婚調停中でも配偶者からの連絡が過剰な場合は、弁護士に相談することを検討してください。


別居中の無視が子どもに与える影響
別居中に配偶者からの連絡を無視することは、夫婦関係だけでなく子どもにも深刻な影響を与える可能性があります。子どもの心理的な安定と健全な成長のために、この問題について理解を深めることが重要です。


子どもの心理的負担の増大
別居後に両親の連絡が途絶えると、子どもは不安や混乱を感じやすくなります。特に、一方の親が連絡を無視している状況を察知した場合、子ども自身が「自分のせいかもしれない」と責任を感じてしまうケースも少なくありません。このような感情的な負担は、子どもの学校生活や日常生活にも影響を及ぼす可能性があります。
面会交流への悪影響
連絡を無視することで、面会交流の調整が困難になるでしょう。子どもにとって両親との関係を維持することは重要であり、一方的な連絡拒否は子どもの権利を侵害する行為とも捉えられかねません。離婚調停や協議離婚の際に、このような対応が不利に働く可能性も考慮すべきでしょう。
養育費や生活費の問題
連絡を無視することで、養育費や婚姻費用に関する話し合いが進まず、結果的に子どもの生活に必要な経済的支援が滞る恐れがあります。子どもの教育費や医療費など、成長に必要な費用について適切な協議ができない状況は、子どもの将来に影響を与える可能性もあります。




配偶者の弁護士から連絡が来た時の対処法は?
配偶者の弁護士から連絡が来た場合、まずは冷静に対処する必要があります。配偶者の弁護士が連絡してきた理由を確認し、自分自身の権利や法的な立場を理解することが重要だからです。では、具体的にどのように対処すべきなのでしょうか。


配偶者に直接連絡しない
弁護士がつくと、その後は弁護士を通してしかやり取りができなくなるため、配偶者に直接連絡してはいけません。通常、弁護士からの通知書にも「弁護士が交渉の代理人となるため今後は配偶者本人に接触しないこと」などと書かれているからです。
万が一離婚調停中、配偶者に直接連絡をした場合は、相手の弁護士から警告される可能性があります。そのようなことが起こると、離婚調停中に裁判官や調停委員からの印象が下がります。
弁護士に依頼・相談する
配偶者に弁護士がついたら、こちらも早めに弁護士に依頼・相談することをおすすめします。相手に弁護士がつき、こちらが本人のみの場合は、交渉や調停で不利なるリスクがあるからです。専門家である弁護士へ依頼をすれば、対等な話し合いができ、離婚交渉にかかる手間や時間による精神的な負担も軽減できるでしょう。
もし弁護士を探すのに時間がかかる場合は、相手方にその旨を伝えておけば調停の申立を待ってくれるケースもあります。
弁護士を通して連絡する
こちらも弁護士を依頼したら、弁護士同士で交渉してもらうのが有効です。代理人間で交渉してもらうことで、離婚条件をできるだけ有利に進める、または配偶者からの離婚の要求に対して拒絶したりできるからです。


別居中の精神的な負担を軽減するための方法
別居という状況は、夫婦双方にとって大きな精神的負担となります。特に相手からの連絡を無視されている状況では、不安や孤独感が増大しがちです。ここでは、別居期間中の精神的な負担を軽減し、冷静な判断ができるようになるための具体的な方法を紹介します。


信頼できる人とのコミュニケーションを大切にする
家族や親しい友人など、信頼できる人との会話は精神的な支えになります。ただし、離婚話や夫婦関係の詳細をすべて話す必要はありません。自分の気持ちを聞いてもらったり、日常的な会話を楽しんだりすることで、孤独感を和らげることができます。実家に頼ることも、一時的な心の安定には効果的でしょう。
法的手続きへの理解を深める
離婚調停や協議離婚の流れ、婚姻費用や養育費の仕組みなど、必要な法的知識を身につけることで、将来への不安を軽減できます。民法の基本的な内容や離婚時の財産分与、親権に関する制度を理解しておくことは、交渉や話し合いの際にも役立ちます。知識があることで、相手の行動に一喜一憂することなく、冷静に対処できるようになるかもしれません。
子どもとの時間を大切にする
子どもがいる場合は、子どもとの安定した関係を維持することが精神的な支えにもなります。両親が離れて暮らしていることに配慮しながら、なるべく子どもの日常生活を最優先に考えましょう。ただし、子どもに両親の問題を相談したり、愚痴を言ったりすることは避け、子どもの心の安定を第一に考えることが大切です。
将来の計画を具体的に検討する
別居期間を今後の人生について考える時間として考えることも重要です。復縁の可能性を探るのか、離婚に向けて準備を進めるのか、自分の本当の気持ちと向き合いましょう。経済的な自立に向けた準備や、子どもの教育環境についての検討など、具体的な計画を立てることで、漠然とした不安を解消できます。
感情のコントロール方法を身につける
相手からの連絡拒否や無視に対して感情的になることは自然な反応ですが、そのような状態が長期化すると精神的な負担が増大します。深呼吸や瞑想、日記を書くなど、自分なりの感情調整法を見つけられると安心です。特に、DV やモラハラの被害を受けていた場合は、専門的なサポートを受けながら心の回復に取り組むことが必要です。
経済的な不安への対処
生活費や将来の経済状況への不安は、精神的な負担の大きな要因となります。現在の家計状況を整理し、必要に応じて就職活動や転職を検討することも大切です。また、離婚後の慰謝料や年金分割などについても、事前に情報収集しておくことで、経済的な不安を軽減できます。
夫婦カウンセリングを受ける
別居中に連絡を無視し続けている状況では、夫婦カウンセリングの活用が有効な解決策となる可能性があります。第三者である専門カウンセラーが介入することで、感情的になりがちな夫婦関係を冷静に見つめ直すきっかけを得られるでしょう。
夫婦カウンセリングでは、お互いの本当の気持ちや離婚に至った原因について、安全な環境で話し合うことができます。連絡を拒否している理由や、相手の行動に対する不満を整理しながら、今後の方向性を検討できます。復縁を望む場合でも、離婚を前提とした話し合いでも、専門家のサポートにより建設的な協議が期待できます。




別居中の連絡問題を解決し円滑な離婚手続きを進めるには
別居後に配偶者からの頻繁な連絡に悩まされている場合、連絡を無視したくなるのは自然な感情かもしれません。しかし、離婚問題を円滑に解決したいなら、弁護士への相談が最も効果的でしょう。
弁護士に正式に依頼すれば、代理人として配偶者との交渉を担当してもらえるため、直接的な連絡から解放され、精神的な負担を軽減しながら、婚姻費用や財産分与、養育費などの重要な条件について適切な交渉を進めることが可能です。感情的になりがちな離婚問題も、専門家の介入により冷静な協議が期待できるでしょう。