
遠方に住んでいる、相手と裁判所で直接顔を合わせたくないなどの理由から、離婚調停に踏み切れないこともあるかもしれません。しかし、2025年3月からは、離婚調停でもウェブ会議を利用したオンライン対応が可能になりました。
この記事では、オンライン離婚調停を成功に近づける準備や心構え、電話調停との違いについて解説します。/
【この記事でわかること】
●オンライン離婚調停の仕組みと2025年3月以降の変更点
●メリット・デメリットと電話調停との違い
●オンライン離婚調停を成功に近づけるための準備や心構え

弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所(東京弁護士会所属)
2009年の事務所開設以来、女性側の離婚・男女問題の解決に注力しています。年間700件以上、累計5000件以上の相談実績があり、多様な離婚のノウハウを蓄積。
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2025年3月よりオンライン離婚調停が可能に

2025年3月1日から、離婚調停でもウェブ会議システムを利用したオンライン対応が可能になりました。これは、民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)により、家事事件手続法268条3項にただし書が加えられたことによるものです。
これにより、当事者は家庭裁判所へ直接出頭しなくても、自宅や弁護士事務所などから映像と音声を通じて調停に参加し、その場で離婚調停を成立させることが可能になりました。
これまでも、調停期日にウェブ会議システムや電話会議を利用して参加する方法は認められていました。ただし、離婚調停を成立させる場面では、対面での意思確認が必要とされ、家庭裁判所への出頭が求められていた点が大きな違いです。今回の改正により、成立時にもウェブ会議による参加が認められたことで、遠方に住んでいる方や裁判所への出頭が難しい方にとって、離婚調停を検討しやすくなったといえるでしょう。
ただし、ウェブ会議を利用できるかどうかは、当事者の希望だけで決まるものではありません。実際に調停を行う家庭裁判所が、当事者の意向や具体的な事情を踏まえて判断します。
オンライン離婚調停のメリットとは

オンライン離婚調停には、場所に縛られにくいことや、手続きに伴う負担を抑えやすいことなど、従来の調停にはないメリットがあります。特に、裁判所への移動が難しい方や、対面でのやり取りに不安がある方にとっては、調停を検討しやすくなる要素といえるでしょう。
一方で、オンラインであっても調停であることに変わりはなく、利用には通信環境やプライバシーへの配慮も必要です。まずは、オンライン離婚調停によって期待できる主なメリットを見ていきましょう。
遠方からでも利用しやすい
オンラインであれば自宅や弁護士事務所などからウェブ会議システムを使って参加できるため、家庭裁判所まで移動する負担を抑えられます。裁判所から離れた場所に住んでいる場合、期日のたびに移動時間を確保する必要があり、交通費や宿泊費が負担になることもあるでしょう。
移動に伴う身体的・経済的な負担を軽減できる点は、オンライン離婚調停の大きなメリットです。
オンラインで必要書類を提出できる
オンライン離婚調停では、ウェブ会議によるやり取りに加えて、資料の画面共有や一部書類のデータ提出など、デジタル形式での対応が可能になる場合があります。必要な資料を事前に提出できれば、調停委員が内容を確認したうえで期日に臨めるため、当日の話し合いも進めやすくなるでしょう。
ただし、すべての書類をオンラインで完結できるとは限りません。書類の種類や裁判所の運用によっては、郵送や持参が必要になるケースもあります。そのため、オンライン離婚調停を希望する場合は、どの資料をどの方法で提出するのかを早めに確認し、期日直前になって慌てないよう準備しておくことが大切です。
心理的な負担が軽減できる可能性がある
オンライン離婚調停の場合、相手方と同じ空間にいる必要がないため、対面でのやり取りに強い不安がある方にとって心理的な負担を軽減できる可能性があります。特に、DVやモラルハラスメントなどが関係するケースでは、裁判所で相手と顔を合わせること自体が大きなストレスになることもあるでしょう。
また、自宅や弁護士事務所など、比較的落ち着いて話せる場所から参加できれば、自分の考えや希望を伝えやすくなる可能性もあります。調停では、感情的な対立をそのままぶつけるのではなく、離婚条件について冷静に話し合う姿勢が大切です。オンラインという形式が、落ち着いて調停に臨むための支えになることも考えられるでしょう。
オンライン離婚調停のデメリット

オンライン離婚調停には、遠方から参加しやすい、相手方と同じ場所にいる必要がないといったメリットがある一方で、オンラインならではの課題もあります。
ここでは、オンライン離婚調停を利用する前に知っておきたい主なデメリットを解説します。
情報漏洩のリスクがある
離婚調停では、夫婦関係や財産、子供に関する事情など、第三者に知られたくない内容を扱う場面があります。オンラインで手続きを進める場合、インターネット経由で映像や音声、資料をやり取りするため、情報の取り扱いには十分な注意が必要です。
システム自体に一定のセキュリティ対策が講じられていても、不正アクセスや画面の無断録画・録音といったリスクを完全になくせるわけではありません。また、自宅や外出先から参加する場合、周囲に会話が聞こえたり、画面上の資料が第三者の目に入ったりする可能性もあります。
参加時は、静かで人の出入りが少ない場所を選び、端末や通信環境の管理にも配慮することが大切です。
プライバシーの確保が難しいケースがある
自宅などから参加する場合、同居する家族や周囲の方に会話内容が聞こえてしまうおそれがあります。離婚調停では、夫婦間の事情だけでなく、財産分与や親権、養育費などの個人的な内容を話す場面もあるため、落ち着いて話せる場所を確保できるかどうかは重要です。
また、画面に映っていない場所に第三者がいる場合、裁判所や相手方からは気付きにくいという課題もあります。本人以外の方が近くで内容を聞いていたり、発言に影響を与えたりすると、公平な話し合いの妨げになりかねません。
自宅から参加する場合は、個室を用意する、周囲に人がいない時間を選ぶ、イヤホンを使うなど、プライバシーを守れる環境を事前に整えておきましょう。
通信機器・環境の確保や基本的なITスキルが求められる
ウェブ会議システムで調停に参加するには、カメラ付きのパソコンやタブレット、安定したインターネット回線、静かに話せる場所などを自分で準備する必要があります。
また、ウェブ会議システムへの接続、マイクやカメラの設定、資料のデータ送受信など、基本的な操作に慣れておくことも求められます。操作に不安がある場合は、期日前に接続テストを行い、使用する端末や通信環境を確認しておくと安心です。
オンラインで離婚調停に参加できることは大きなメリットといえますが、当日に落ち着いて進めるためには、機器や操作面の準備も調停の一部として考えておく必要があります。
オンライン離婚調停と電話調停の違い

離婚調停に遠隔で参加する方法には、ウェブ会議を利用する方法と、電話会議を利用する方法があります。どちらも裁判所から離れた場所で参加できる点は共通していますが、話し合いの進めやすさや成立時の扱いには違いがあります。
ここでは、オンライン離婚調停と電話調停の違いを見ていきましょう。
表情やしぐさなどがわかる
オンライン離婚調停では、カメラを通じて当事者や調停委員の表情、しぐさなどを確認しながら話し合いを進められます。音声だけでは伝わりにくい反応や雰囲気を把握しやすい点は、電話調停との大きな違いです。
離婚調停では、条件面だけでなく、相手の反応や調停委員の受け止め方を見ながら話す場面もあります。電話調停の場合、声の調子から一定のニュアンスは伝わるものの、表情や姿勢までは確認できません。そのため、発言の意図が伝わりにくかったり、細かな感情の動きが読み取りにくかったりすることがあります。
オンライン離婚調停でも、対面とまったく同じように空気感をつかめるわけではありません。ただし映像がある分、電話調停よりも意思疎通のずれを抑えやすいといえるでしょう。
電話調停では調停の成立はできない
ウェブ会議を利用するオンライン離婚調停では、2025年3月以降、当事者が家庭裁判所に出頭しなくても、映像と音声を通じて離婚調停を成立させることが可能になりました。遠方に住んでいる場合でも、成立のためだけに裁判所へ行く必要がなくなる点は、電話調停との大きな違いです。
一方、電話調停は音声のみで進行するため、離婚調停を成立させる場面では、これまでどおり対面での意思確認が必要です。調停の期日自体に電話で参加できる場合があっても、最終的に合意を成立させる際には、家庭裁判所への出頭が求められます。
遠隔で参加できるという点では共通していても、成立まですべてオンラインで完結できるかどうかは異なります。遠方から離婚調停を進めたい方にとって、この違いは手続きの負担を考えるうえで重要なポイントといえるでしょう。
所要時間に差が出ることも
電話調停は音声のみで進むため、表情やしぐさが見えず、発言の意図や細かなニュアンスが伝わりにくい面があります。聞き違いや認識のずれが生じると、確認に時間がかかり、話し合いがスムーズに進まないケースも考えられるでしょう。
また、電話調停では成立時に出頭が必要となるため、遠方に住んでいる場合は日程調整が難しくなることがあります。仕事や家庭の都合に加えて移動時間も考慮しなければならず、結果として成立までの期間が長引く可能性も否定できません。
一方、オンライン離婚調停では、映像を通じて反応を確認しながら話し合えるうえ、成立場面もウェブ会議で対応できる場合があります。そのため、状況によっては電話調停よりも日程調整や意思確認を進めやすく、手続き全体の負担の抑制が期待できる方法といえるでしょう。
オンライン離婚調停を成功させるためのポイント

オンライン離婚調停を成功に近づけるには、オンラインで参加できるかどうかだけでなく、事前準備の質が重要になります。調停では、限られた時間の中で自分の考えや希望条件を伝え、相手方との合意点を探っていかなければなりません。
特にオンラインの場合、対面よりも空気感が伝わりにくい面があるため、当日の話し方や提出資料、争点の整理が結果に影響することもあります。ここでは、オンライン離婚調停に臨む前に押さえておきたいポイントを解説します。
入念に準備をしておく
オンラインで調停に参加する場合、当日の通信トラブルや操作ミスが話し合いの流れを妨げることがあります。
カメラ付きの端末やインターネット回線を用意するだけでなく、ウェブ会議システムに問題なく接続できるか、マイクやカメラが正常に使えるかを事前に確認しておきましょう。
当日は、裁判所からの案内、提出済みの資料、メモ、筆記用具などを手元にそろえておくと安心です。必要な資料をすぐ確認できないと、質問に答えるまでに時間がかかったり、伝えたい内容を言い忘れたりする可能性があります。
また、「最初に伝えること」「確認したいこと」「次回までに整理すべきこと」などを簡単にメモしておくと、オンラインでも落ち着いて対応しやすくなります。
資料は事前に提出しておく
オンラインでは、対面で話す場合よりも細かなニュアンスが伝わりにくいことがあります。その場で口頭説明だけに頼ると、主張の背景や証拠との関係が十分に伝わらない可能性もあるため、必要な資料はできるだけ事前に提出しておきましょう。
提出資料としては、婚姻費用や養育費に関する源泉徴収票・給与明細・課税証明書などの収入資料、財産分与に関係する預貯金通帳、不動産資料、保険証券、住宅ローンの残高がわかる資料などが考えられます。別居に至る経緯を時系列でまとめたメモや、子供の生活状況・監護状況を整理した資料も、争点によっては役立つでしょう。
重要なのは、資料を多く出すことではなく、自分の主張と資料の対応関係を明確にすることです。養育費を求めるのであれば双方の収入資料、財産分与を求めるのであれば共有財産の一覧、別居後の生活費を主張するのであれば支出状況がわかる資料を準備しておくと、調停委員も事案を把握しやすくなります。
資料をあらかじめ確認してもらえれば、当日の話し合いでは論点を絞りやすくなり、限られた時間を有効に使えるでしょう。
対面とオンラインを組み合わせることも視野に入れる
法改正によって、最初から最後までウェブ会議だけで参加し、離婚調停を成立させることも可能にはなりました。ただ、すべてのケースでオンラインだけが最適とは限りません。事案の内容や相手方との関係、調停委員とのやり取りのしやすさによっては、対面とオンラインを組み合わせるほうが進めやすいこともあります。
例えば、初回は裁判所に出向いて手続きの流れや雰囲気を確認し、その後の期日をオンラインにする方法も考えられます。対面で一度話しておくことで、調停委員の受け止め方や相手方の反応を把握しやすくなる場合もあるでしょう。
一方で、DVやモラハラなどの事情があり、相手方と同じ場所に行くこと自体が大きな負担になる場合は、無理に対面を選ぶ必要はありません。オンラインと対面のどちらがよいかは、負担の大きさや安全面、話し合いの進めやすさを踏まえて検討する必要があります。
争点の明確化
オンライン離婚調停を円滑に進めるには、「何が争点なのか」「どこまでなら譲れるのか」を事前に整理しておくことが重要といえます。離婚調停では、事実関係そのものの細かな真偽よりも、「親権・養育費・財産分与・慰謝料などをどう解決したいのか」という解決案を明確にして伝えることが、合意形成のうえで有利に働く可能性があるためです。
結婚から別居に至る経緯や現在の生活状況を確認しつつ、自身の希望条件や妥協ラインを書き出しておくことが、オンライン調停を成功させるためのポイントのひとつになり得るでしょう。
弁護士との事前打ち合わせの重要性
オンライン離婚調停を利用する場合、事前に弁護士と打ち合わせを行い、主張の骨子や提出資料の方針、オンラインならではの進め方を共有しておくことが望ましいでしょう。
弁護士との打ち合わせで、事実関係を時系列で整理し、希望条件や優先順位を明確にしておけば、調停当日に限られた時間の中でも効率的に主張を伝えやすくなる可能性があります。
オンライン離婚調停で主張や資料の整理に不安がある場合は、期日前に弁護士へ相談しておくと安心です。
感情的にならないための心構え
離婚調停では、感情的になって相手の非難に終始すると調停委員に与える印象が悪化し、建設的な話し合いが進みにくくなるため、「感情的にならないこと」が重要なポイントといえます。
事前にメモや書面で伝えたい内容を整理しておき、「自分がどのように解決したいのか」にフォーカスして話すことが大切です。相手の悪口や過去の不満を長く語りすぎない、必要以上に話さないなどを意識することも、オンライン離婚調停を成功させるための心構えとして考えられるでしょう。
それでも、相手方とのやり取りを考えるだけで強い不安や怒りが出るなど、感情的になるかもしれないという不安がある場合は、カウンセラーなどの専門家に相談することも視野に入ってきます。
事前に気持ちを整理しておくことで、調停当日に伝えたい内容や譲れない条件を落ち着いて確認しやすくなります。感情面の負担を一人で抱え込まず、必要に応じてサポートを受けながら、オンライン離婚調停に臨む準備を整えましょう。
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オンライン離婚調停についてよくある質問
Q1.オンライン離婚調停の録画・録音は可能?
オンライン離婚調停であっても、調停期日の録画・録音は認められていません。内容を記録したい場合は、録音や録画ではなく、メモを取る形で対応するのが原則です。
Q2.オンライン離婚調停に弁護士は必要?
離婚調停は、オンライン・対面を問わず、法律上は本人のみで手続きに臨むことも可能であり、弁護士選任が義務付けられているわけではありません。もっとも、有利な条件での合意や複雑な財産分与・親権争いなどがある場合には、法的主張の整理や書面作成、交渉のサポートを得るため、弁護士へ依頼するメリットが大きいケースもあります。
Q3.オンライン離婚調停はカメラOFFでも可能?
当事者が本人であることを確認しながら進める必要があるため、オンライン離婚調停ではカメラONが前提です。通信状態が悪い場合は、音声のみや電話会議に切り替えられることもあります。ただし、離婚調停を成立させる場面では、映像と音声を用いる必要があります。
Q4.オンライン離婚調停に家族や知人の同席は可能?
オンライン離婚調停では、画面外にいる第三者が同席していても外見上把握しづらく、なりすましや不当な影響が問題視されています。原則として、代理人(弁護士)以外の第三者は参加できません。
Q5.協議離婚か離婚調停か悩んでいるときはどうすればいい?
協議離婚は夫婦間の話し合いのみで離婚条件を決める手続きであり、比較的迅速かつ柔軟ではあるけれども公平性の担保や権利の見落としというリスクもあるといえます。
一方、離婚調停は、調停委員や裁判官を介して話し合いを行う方法です。公的な記録が残り、合意内容が明確化しやすいけれども一定の時間と手間を要するという側面があります。
これらに加えて、弁護士会や民間機関が運営するADR(裁判外紛争解決手続)を利用し、専門家の仲介のもとで柔軟に話し合いを進める選択肢もあります。
協議離婚・離婚調停・ADRそれぞれの特徴を踏まえ、状況に応じて弁護士や専門機関へ相談しつつ、自分たちにとって納得度の高い手続きを選択することが望ましいといえるでしょう。
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視野を広く持って離婚の手段を選択することが大切

2025年3月以降、離婚調停はウェブ会議を利用して成立させることが可能になりました。遠方に住んでいる方や、相手方と同じ場所で話すことに不安がある方にとって、オンライン離婚調停は負担を抑えながら手続きを進める選択肢になります。
ただし、利用できるかどうかは家庭裁判所の判断によるため、事前に確認が必要です。また、オンラインで参加できるようになっても、調停そのものに準備が必要なことは変わりありません。争点を明確にし、必要な資料をそろえ、感情的にならずに話し合う姿勢を持つことで、納得できる合意に近づきやすくなります。
裁判所を利用する前に柔軟な話し合いを希望する場合は、離婚ADRも選択肢になります。
リコ活調停は、離婚に関する話し合いを進めるための民間ADRサービスです。家庭裁判所の調停に進むべきか迷っている方や、まずは専門家を交えて冷静に条件を整理したい方は、こうしたサービスも視野に入れて検討するとよいでしょう。
自分の状況に合った方法を選ぶためにも、オンライン離婚調停だけに限定せず、協議離婚、離婚ADR、家庭裁判所の調停など複数の手段を比較しながら、必要に応じて弁護士や専門機関へ相談しましょう。
