夫に長い期間無視されることがたびたびあり、疲れたという方もいるかもしれません。夫婦喧嘩で数日話さないということはあっても、1週間、1ヶ月と延々と続くような無視は、夫婦関係に深刻な影響を与える可能性があります。特に夫が話し合いを拒否したり、不機嫌な態度で会話を避けたりする場合、モラハラに該当するのか気になる方もいるでしょう。本記事では、夫にたびたび無視されて疲れた時の具体的な対処法をお教えします。
鈴木 秀一/北松戸ファミリオ法律事務所(千葉県弁護士会所属)
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夫の無視に疲れた… モラハラの判断基準
夫からの無視が長期化している場合、それはモラハラの一種かもしれません。一般的な夫婦喧嘩後の冷却期間における無視とは異なり、日常的に無視することにより、妻を不安にして相手を精神的に追い詰める行動は、モラルハラスメントに該当する可能性があります。
特に、話し合いを避ける傾向が強い、謝罪を受け入れようとしない、家事や子どものことで相談しても反応がないなどの行動が見られる場合は、注意が必要かもしれません。このような状況では、無視されている側の心理状態が不安定になりやすく、自分に非があるのではないかと悩んだり、相手の機嫌を過度に気にするようになることがあります。
モラハラかどうかの判断基準として考えられるのは、
・無視の理由が明確でない
・お互いに冷静になった後も続いている
・日常生活に支障をきたすほど長期間続いている
などです。特に専業主婦の場合、夫への経済的依存により別居や離婚が困難で、一人で我慢し続けるケースもあるようです。
夫の無視はいつまで続く?無視をする夫の心理
夫が妻を長期間無視する時、夫はどのような心理状態にあるのでしょうか。状況によって異なりますが、考えられる夫の心理についてご説明します。無視の期間が長くなるほど、そして頻度が多いほど、モラハラである可能性が高まるといわれています。

数日程度なら話すきっかけを見つけられないことも
夫が妻を無視している期間が二、三日から一週間程度であれば、必ずしもモラハラとは限らないかもしれません。そのときの夫の心理として、次の3つが考えられます。
・自分が怒っていることを相手に理解してもらいたい
・感情がまだ収まっていない状態
・意固地になって仲直りのきっかけを見つけられない
このような気持ちは、誰にでも生じる可能性があります。お互いに冷静になる時間を置いた後、妻から歩み寄ることで夫婦関係の修復ができる場合もあります。
ただし、怒った際に妻の人格を否定するような暴言を吐いたり、物に当たったりする行動が見られる場合は要注意です。過度に感情的になって無視を始めるようであれば、モラハラの傾向を疑った方がよいかもしれません。
1週間以上の無視はモラハラ悪化の兆候あり?
妻を無視する状態が1週間以上続く場合、モラハラの可能性が高まります。明らかな無視が長期間続く場合、夫は妻の態度に対して何かしら不満を抱えていて、その不満が解消されない限り、夫は無視を続けることもあります。不満の内容として考えられるのは以下のようなものです。
・妻が自分の怒りを理解していないという認識
・妻が自分の優秀さを認めていないという思い込み
・妻にとっての自分の重要性を妻が理解していないという感覚
つまり夫は、自分の存在価値を妻に認めさせたいと考えている可能性があります。これはモラハラによく見られる考え方の一つです。
無視によって妻が困ったり従うような態度を示したりすると、夫は満足するかもしれませんが、その後は不満があるたびに無視を繰り返すようになる傾向があります。無視のような嫌がらせを反復し、段階的にエスカレートさせていくのが、モラハラの特徴です。
3ヶ月以上の無視は、ほぼモラハラと考えられる
モラハラ気質の夫は、嫌がらせの言動を段階的にエスカレートさせる傾向がありますが、3ヶ月以上妻を無視するようになると、かなり深刻な状況といえるでしょう。妻を完全に見下し、自分の意のままになる存在と認識している可能性があります。
おそらく、それまでにも妻に対して暴言を吐いたり、威嚇するような言動があったと推測され、そのような場合、妻はモラハラの被害を受けているといえるかもしれません。
本人は、自分がモラハラを行っているという自覚がない場合も多く、妻の言動を正すために、正当な行為をしていると思い込み、妻が従順な態度を取ることを求めている可能性があります。
妻が夫に精神的に支配される前に、モラハラに詳しいカウンセラーや弁護士への相談を検討することをお勧めします。


夫の無視に疲れたときの対処法
モラハラの可能性がある夫に無視されるようになり、心身ともに疲れたときは、どのように対処すればいいのでしょうか。効果的と思われる対処法を3つ紹介します。

理由を聞いて話し合う
夫のモラハラがエスカレートしないうちに対応すれば、モラハラ気質があることを夫に自覚させられるかもしれません。夫が自分を無視する理由がわからないときは、直接、理由を聞いてみましょう。このとき、素直に自分の気持ちを話してくれ、今後どうすればいいのか話し合いに応じてくれるのであれば、モラハラではない可能性があります。
夫が理由を言いたがらないときは、無視することはモラハラの一種であり、自分は傷ついていることを正直に伝えましょう。夫が自分のモラハラ気質に気付くきっかけとなるかもしれません。ただ、話し合いに応じなかったり、自分の非を認めなかったりしたときはモラハラ気質が強く出ている可能性があります。
気付かぬ素振りで普通に過ごす
モラハラ夫が妻を無視するのは、自分が怒っていることを態度で妻に悟らせるためです。自分の態度を見て、妻が気を使ったり、機嫌を取ったりすると夫は満足します。逆に妻が夫の様子に無関心で、不機嫌な態度に気付かず放置していると失望し、中にはさらに怒り出す夫もいます。
こうした性格を逆手に取り、無視されても気付かない振りをして普段通り接しましょう。尋ねても返事がなければ、「じゃあ、いいのね」と言って自分の思い通りに物事を進めてしまいます。夫があわてて文句を言っても「何も言わず黙っていたじゃない」で終わりです。自分一人で空回りしているのに気づけば、ばかばかしくなって無視するのをやめるかもしれません。
夫婦カウンセリングを受ける
夫からの無視が続き、夫婦関係の修復が困難な状況では、専門家のサポートを受けることも一つの方法です。夫婦カウンセリングでは、中立的な立場のカウンセラーがお互いの気持ちや考えを整理し、冷静な話し合いの場を提供してくれます。
夫婦が抱える根本的な問題に向き合うことで、関係性の改善につながる可能性があります。特に、夫が無視する理由や心理状態を理解し、お互いの感情を適切に伝える方法を学ぶことができるでしょう。
まずは専門のカウンセラーに相談してみることを検討してみてください。夫婦カウンセリングは一人でも、夫婦二人でも受けることが可能です。

別居や離婚を考える
夫からの無視が長期間続き、モラハラの傾向が見られ心身ともに疲弊している場合は、別居や離婚も一つの選択肢として考える必要があるかもしれません。特に、子どもへの影響や自分自身の心理状態の悪化が心配される場合は、早めの対処が大切です。
夫がモラハラをする理由は、妻を屈服させ支配することですから、妻が別居や離婚を切り出しても多くの場合、激しく抵抗します。中には「家を出て行ったらただじゃおかない」などと脅迫めいたことを言う夫もいます。別居や離婚を切り出す前に、弁護士にも相談するなどして十分準備しておきましょう。
離婚や別居の手続き、財産分与、親権など、複雑な法的問題についてアドバイスを受けることができ、証拠の収集方法や、離婚までの準備についても適切な指導が得られるでしょう。


夫の無視はモラハラの証拠になる?
夫から無視をされたら、それはモラハラを受けている証拠になるのでしょうか。また、それは離婚を考えた際、有利な証拠として扱われるのでしょうか。夫から無視された場合、それをどのように証拠として残し、別居や離婚の話し合いで有利な証拠として扱われるようにするには、どうすれば良いのかを説明します。

無視されたことを記録すれば有利になる?
夫から無視されたことを記録しておくと、夫がモラハラを認めないときに、証拠として役立ちます。しかし、気を付けていただきたいことが1つあります。それは、モラハラを受けていたからと言って、必ずしもそれが離婚するにあたって有利な事情になるとは限らないということです。
夫がモラハラを認めて、素直に離婚に応じれば問題はありませんが、夫が離婚を拒否したため、家庭裁判所での調停や裁判に持ち込んだ場合、モラハラがあったことだけによって夫婦関係が破綻したと認められる可能性はかなり低いものとなります。「夫婦喧嘩がこじれただけで、よくあること」と調停委員や裁判官に判断されるケースも少なくありません。

無視という形でモラハラをする夫は外面がよい場合も多く、調停に出席し上手く話をすることで、単なる夫婦喧嘩に過ぎないことをアピールし、夫の無視により夫婦関係が悪化している状況が調停委員や裁判官に正しく伝わらない場合もあるのです。
耐え難いモラハラで離婚するしかないと考えたときも、長期間無視されたというだけでは不十分で、他にも暴言や経済DVの証拠も残しておくことも必要です。さらに暴力や不倫などの事実があれば、有利になります。それでも裁判で離婚が確実に認められるとは限らず、とりあえず別居するというケースもあります。
無視されたことを記録する際のポイントは
無視されたことの証拠を残すというのは、考えてみると意外と難しいものです。相手は黙ったままで何もしないので、1日くらい口を利かなかったくらいでは無視したという証拠にはなりません。無視していた期間の出来事の記録を継続的に残しておくことが必要です。
無視されたことの証拠として、第一に考えられるのは日記です。どのようなきっかけで無視されるようになり、どのようにして無視をやめたのか。期間はどれくらいで、その間どのような態度だったのかを日記に残しておきます。時折、話しかけても返事をしない様子を録音しておくことも大切です。
無視が何日以上ならモラハラになる?
無視された期間がどれくらいならモラハラにあたるなどという基準はありません。無視するようになったきっかけや、その際の言動、無視する頻度などが重要です。とにかく、起きたことをしっかり記録しておきましょう。
長期間無視されたからと言っても、必ずしもモラハラだとは限りません。夫が仕事のストレスで鬱病などになっていたというケースも考えられます。一方で、無視していた期間が短くても、無視を始める前に妻を激しい言葉で罵倒し、妻が自分の非を全面的に認めたから無視をやめたという場合は、モラハラの可能性が高くなります。
夫の無視に疲れたら専門家への相談を検討しよう
夫から無視された経験があり、疲れを感じている方は少なくありません。数日程度の無視であれば夫婦喧嘩の延長として考えられますが、長く続く場合はモラハラの可能性を疑った方がよいかもしれません。
夫の無視には、感情的になって話すきっかけを失った場合から、妻をコントロールしようとする意図的な行動まで、さまざまな心理的要因が隠れています。
夫からの無視で疲れた場合には、一人で悩まずに専門家への相談を検討することが大切です。夫婦カウンセリングでは関係の修復を目指すことができ、別居や離婚を検討する場合は弁護士のサポートを受けることで、適切な対処法を見つけることができるでしょう。自分自身の気持ちを大切に、無理をせずに解決策を探していくことをお勧めします。