夫の金銭感覚に疑問を感じたら、まずはその原因や背景、夫婦間でどのようなトラブルが起こりがちなのかをきちんと理解することが大切です。この記事では、夫婦の金銭感覚のズレがもたらす影響や具体的な対策法などを幅広く紹介していきます。
鈴木 成公/新大塚法律事務所(第一東京弁護士会所属)
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離婚等の家族に関する案件や男女トラブルの案件を多く取り扱っている事務所です。法律的な観点だけでなく、人生の再出発に向けた総合的なアドバイスを様々な角度からさせていただきます。
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【体験談】よくある夫の金銭感覚トラブル実例
お金の使い方に慎重にならなければいけない局面でも、金銭感覚のおかしい夫が衝動的に支出してしまうケースは少なくありません。実際に起こりやすい夫の金銭感覚に関するトラブルを具体例から読み解きましょう。
予算外で高額な買い物をしてしまう
夫の金銭感覚がずれていると、生活費や貯蓄の計画を無視して衝動的に高額な支出をしてしまいがちです。価値観のズレが積み重なると、夫婦関係にも深刻な影響を及ぼしかねません。家計を守るためにはルールづくりと冷静な話し合いが不可欠です。

結婚当初から夫は、ボーナス前になると急に高額の買い物をしてしまう癖がありました。家計簿をつけていても相談はなく、新しいテレビや自転車などが突然届くたび、呆然とすることが多々あります。
(30代/共働き/子ども1人)
趣味・ブランド品へ歯止めなくお金をかける
趣味やブランド品は人生を豊かにする一方で、夫婦間で価値観の違いが表れやすい分野でもあります。収入に見合わない浪費癖が続くと、将来の貯蓄や子どもの教育費にまで影響が及ぶため、冷静な金銭感覚とパートナーへの配慮が求められます。



夫はブランドの靴やジャケットに目がなく、毎月のようにネットで注文しています。クローゼットにはまだタグのついたままの服が並び、生活費が足りない月もあるのに「これがないと仕事のモチベが上がらない」と言い張ります。
(40代/専業主婦/子ども2人)
クレジットカードの分割払いに依存する
支払いが先延ばしになるカードの分割払いやリボ払いは、金銭感覚を狂わせる要因になりやすく、家計への影響を見えにくくします。家族の生活を守るには、支出を「先に見える形」にして、夫婦で現実的な返済計画を立てることが大切です。



夫はほとんどの買い物をカードで分割払いにしていて、請求額がいくらになるのかも気にしていません。明細を見せてと言っても「俺のお金だから関係ない」と突っぱねられ、家計を把握できずに不安でたまりません。(30代/パート/子どもなし)
夫の金銭感覚がおかしいのはなぜ?原因と特徴
一般的に「金銭感覚がおかしい」とは、収入や家計状況に見合わない支出を繰り返したり、生活費よりも趣味や嗜好品を優先したりする状態を指します。まずは夫の金銭感覚に違和感がある原因と特徴を探ってみましょう。


金銭感覚のズレに気づく瞬間とは?
夫に対して金銭感覚の違和感を抱くのは、主に生活費や貯金の計画が崩れたときや、事前に相談なく高額な買い物をされたときです。たとえば、ボーナス前にブランド品を購入したり、月末にお小遣いが足りないと追加を要求されたりといった場面で、「なんでそんなお金の使い方をするの?」と戸惑うことがあるでしょう。
このような状況が続くと、夫婦間の信頼関係にもヒビが入り、やがて夫婦喧嘩や離婚の原因となることもあります。
育った環境が金銭感覚に与える影響
夫の金銭感覚がおかしいと感じる背景には、育った家庭環境の影響があることが少なくありません。たとえば、幼少期から「欲しいものはすぐ手に入る」という価値観で育てられた人は、欲求を我慢する習慣が身につかないまま大人になります。
また、親が浪費家だったり、お金の使い方について話し合う文化がなかった家庭では、結婚後もお金の管理が苦手なままになっていることがあります。
性格やストレス耐性も影響する
金銭感覚は、性格や感情のコントロール力とも深く関係しています。目の前の欲求を我慢できず、衝動的に買い物をしてしまう人や、ストレスを買い物で解消しようとする人は、計画的な支出が苦手な傾向にあります。
また、「自分のお金は自由に使ってよい」と考えるタイプの男性は、結婚してからも独身時代と同じようにお金を使いがちです。家計を一緒に担うという意識が弱いと、夫婦間に温度差が生まれやすくなります。
夫婦間の金銭感覚のズレがもたらす家庭への影響
夫婦間で金銭感覚が異なると、家計や心理的負担にどのような影響があるのでしょうか。


家族の将来設計への不安
夫が衝動買いなどを繰り返し、貯蓄がまったく増えない状態では、家族全体が将来に希望を持ちづらくなります。家計が不安定だと、精神的にも落ち着いた生活を送りにくくなるでしょう。
さらに、夫婦の間で子どもの教育費や住宅ローンなど将来の大きな出費に対する考え方が定まっていなければ、不安が増すことになります。
家庭として安定した経済基盤を築くためには、将来設計を具体的に共有し、夫婦で協力しながら目標を達成する姿勢が重要です。
生活費負担が妻に偏る
金銭感覚のズレによって、どちらか一方が生活費の大部分を負担する事態が生まれることがあります。たとえば、夫が浪費を続けていて妻が節約や生活費をしっかり管理している場合、家計の重荷が妻側に集中するかもしれません。
そうした状況が長く続くと、精神的にも負担が大きくなり、不公平感が夫婦間の関係を悪化させる原因となります。家計を支える側は「自分ばかりが犠牲になっている」という感情を抱きやすいのです。
金銭感覚をすり合わせるための夫婦の家計管理術
夫婦間の金銭感覚のズレを最小限にするために、具体的な家計管理のテクニックを紹介します。家計管理は一度仕組みを作ったら終わりではありません。ライフステージの変化や収入の増減に合わせて、夫婦が話し合いながらアップデートしていくことが長続きのポイントです。


お互いの金銭感覚を「見える化」する
夫婦で金銭感覚をすり合わせるには、まず収入・支出・貯蓄の状況を共有することが第一歩です。家計簿や収支表を使い、何にどれだけ使っているかを「見える化」すれば、相手のお金の使い方に対する理解も深まります。数値で客観的に把握することで、感情的なすれ違いを防ぎやすくなります。
家計管理のルールは「ふたり」で決める
生活費や貯蓄、自由に使えるお金など、家計の基本ルールは一方が決めるのではなく、夫婦で話し合って決めることが大切です。収入や支出のバランスをふたりで確認し、納得感のある管理方法を選ぶことで、無理なく続けやすくなり、夫婦間のストレスや不満も減らせます。
お小遣い制のメリットとデメリット
お小遣い制は、使える金額を決めておくことで浪費を防ぐ有効な手段です。特に金銭感覚にズレがある夫婦にとっては、トラブル予防の効果が大きい一方で、「制限されている」と感じさせない工夫も必要です。金額だけでなく使い道の自由度なども話し合って決めると良いでしょう。
家計簿・アプリで情報を共有する工夫
最近は、夫婦で共有できる家計簿アプリも充実しています。手軽に支出の内訳が見られるため、感覚ではなく事実に基づいて話し合えるのが大きなメリットです。カレンダー連携やメモ機能を活用すれば、生活費や光熱費の管理もスムーズになり、会話のきっかけにもつながります。
ボーナスや臨時収入はどうする?
ボーナスや臨時収入は、日常の家計とは別にルールを決めておくと安心です。全額を自由に使うのではなく、「○割は貯金」「○割は家族のため」など使い方を明確にすることで、無駄遣いや夫婦喧嘩を避けられます。収入が増えるほど、使い方の価値観のズレが出やすいため注意が必要です。
感情的にならずに話し合うコツ
お金の話は感情的になりやすいものです。話し合う際は、相手を否定せず、「自分はこう感じた」という伝え方を意識しましょう。タイミングや話す環境も重要で、落ち着いた状態で短く区切って話すのがおすすめです。夫婦間の信頼関係を守りながら、お互いの価値観を共有することがポイントです。


共働きか専業主婦かで異なる?金銭感覚のズレと対策のポイント
世帯の収入構成によっても、金銭感覚のズレが生じやすい場面には違いがあります。


共働き夫婦の場合
どちらも収入を得ているため、「自分で稼いだお金は自由に使いたい」という考え方になりやすいでしょう。その結果、生活費や貯金といった“共同で負担すべき部分”への意識が薄れ、支出の優先順位がズレやすくなります。
専業主婦家庭の場合
一方、収入が一方に偏っている家庭では、稼いでいる側に家計の主導権が集中しやすくなります。任せきりにしてしまうと、相手の金銭感覚に問題があっても気づかないまま家計が悪化する可能性もあります。
どちらのケースでも、家計について定期的に話し合い、状況を共有することが大切です。「何にお金を使いたいのか」「将来のために何を優先するのか」といった価値観をすり合わせておけば、問題が起きても冷静に対応しやすくなります。


経済的DVを疑う場合の判断基準と対処法


夫婦間の金銭管理が極端になると、経済的DVの可能性を考慮する必要があります。
経済的DVとは、一方が家計を一方的に管理し、相手に十分なお金を与えない、もしくは過剰に浪費させることで生活を圧迫するといった形の精神的・社会的な支配です。夫が生活費をギリギリしか渡さないなどの行為がこれに該当します。相手の財布やカードを取り上げる、妻名義で過度に借金を負わせるなど、厳しい束縛も経済的DVの範疇に入ります。こうしたケースでは、夫婦間の話し合いだけでは解決が難しく、専門機関や弁護士の助けが必要になる場合が多いです。
もし少しでも経済的DVの疑いを感じたら、早めに地方自治体の相談窓口や弁護士に相談しましょう。深刻化すると精神的にも追い詰められ、逃げ道がなくなるケースがあるため、迅速な対処が大切です。


専門家に頼るメリットとは?
夫婦間の金銭感覚のズレが大きく、話し合いだけではどうしても改善が進まない場合にこそ、第三者の客観的な視点が役に立ちます。問題が深刻化しそうな場合、専門家の力を借りることで解決への道筋がより明確になります。


ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナーは、保険や投資、年金などの知識を活かし、長期的視点で家計を見直すプロフェッショナルです。将来に備えるための資産形成や、ライフイベントごとの予算設計などを総合的にサポートしてくれます。
夫の浪費グセがある場合でも、どの程度まで娯楽費を許容できるかなど、バランスの取れたアプローチを提案してもらうことができます。資産運用の知識に乏しい人でも、専門家のサポートがあれば安心して取り組めるでしょう。
また、保険の見直しや住宅ローンの借り換えなど、大きなコストダウンを図れる可能性があるのも魅力です。総合的な視点で家計をチェックしてもらうことで、夫婦の将来設計をより現実的に捉えられます。
夫婦カウンセラー
夫婦カウンセラーは、お互いの価値観やコミュニケーションの方法に焦点を当てて問題解決を支援します。金銭感覚のズレが原因で会話がかみ合わなくなっている場合、その根本原因を探ることで解決の糸口を見つけることができます。
お金に関する論争は、実は夫婦間の別の問題やストレスが表面化した結果であることも多いです。一方的な非難ではなく、お互いを理解し合うためのプロセスを学ぶことで、金銭トラブル以外の関係問題も改善につながる可能性があります。
カウンセリングの場では、冷静に自分自身の考え方や行動パターンと向き合えるため、感情が先走りやすい夫婦喧嘩とは異なる成果が得られることが期待できます。夫婦カウンセリングはお一人でも、夫婦二人でも受けることが可能です。


弁護士
もし金銭トラブルが深刻化し、離婚や財産分与など法的な問題に発展した場合や経済DVの可能性がある場合は、弁護士の力を借りる必要があるでしょう。法律の専門家として、夫婦間の権利関係や支払い義務などを的確に整理し、交渉や手続きを進めてくれます。
経済的DVが疑われる場合や、夫が大きな借金を抱えてしまった場合にも、早めに相談することでリスクを最小限に抑えることができるでしょう。


金銭感覚がおかしい夫を説得するコミュニケーション術
金銭感覚のおかしい夫を責めるのではなく、理解を求める姿勢で話し合いを進めるためのヒントを解説します。


感情ではなく「事実」から伝える
夫の浪費や家計の乱れに気づいたとき、まずやりがちなのが感情的な批判です。しかし「なんでこんな無駄遣いをするの!」と責める口調では、相手は防御的になり、話がかえってこじれる可能性があります。
最初の一歩は、冷静に「何が起きているのか」を客観的な事実として共有することです。たとえば、「今月は生活費が赤字になっている」「カードの請求が想定より多かった」など、具体的な数字を提示すると説得力が増します。
「なぜ困っているのか」を理論的に伝える
次に、その支出がなぜ問題なのかを理屈として説明しましょう。「感情」ではなく「理由」を伝えることで、相手も納得しやすくなります。
たとえば、「このままだと子どもの教育費が足りなくなるかもしれない」「老後資金の貯蓄計画に支障が出る」など、家族全体の将来像を交えて話すと伝わりやすくなります。
一方的に話すだけでなく、相手の意見も聞く
一方的に意見を押し付けるのではなく、相手の考えや理由にも耳を傾けることが重要です。浪費に見える支出にも、ストレス解消や自尊心の補填など、何らかの背景があるかもしれません。
「どうしてそれが必要だと感じたのか」「ほかの方法で満たせるものはあるか」など、問いかけながら対話を重ねることで、歩み寄りの糸口が見えてくることもあります。
「家族・夫婦のゴール」を共有する
最終的には、家族としてどういう生活を目指すかというビジョンを夫婦で共有することが、金銭感覚のすり合わせには欠かせません。
「○年後までにマイホームを買いたい」「教育費や老後資金を確保したい」などの共通目標をもとに、「今、何を優先すべきか」を一緒に考える姿勢が、自然と協力体制を生み出します。
夫婦が幸せに暮らすための金銭感覚とは
最終的に、夫婦それぞれの価値観を尊重しつつ、将来設計の面からバランスを取ることが大切です。
金銭感覚のズレは、夫婦間において大きな不安要素になり得ます。しかし、その原因や背景を理解し、具体的な家計管理術やコミュニケーション方法を取り入れることで、改善の余地は大いにあります。
無理に相手を変えようとするのではなく、互いの考え方を尊重し合いながら折り合いをつけていく過程が大切です。時には専門家の力を借りることで、スムーズに解決へと導くこともできるでしょう。