家庭内別居が始まると、夫婦の行く末はどうなるのでしょうか。調査によると、家庭内別居を経験した夫婦の83%が離婚を選択しています。この記事では、家庭内別居の行く末として考えられるパターンや離婚までの期間、関係修復の方法、離婚を決意した際の準備について詳しく解説します。
この記事でわかること
・家庭内別居の行く末として考えられる3つのパターン
・家庭内別居から離婚に至る確率と期間のデータ
・関係修復を目指す方法と離婚を決意した際の具体的な準備

弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所(東京弁護士会所属)
2009年の事務所開設以来、女性側の離婚・男女問題の解決に注力しています。年間700件以上、累計5000件以上の相談実績があり、多様な離婚のノウハウを蓄積。
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家庭内別居の行く末は?離婚しかない?
家庭内別居に至るまでには、夫婦喧嘩や日常的なすれ違いなど、大小さまざまな要因が関係しています。一度始まった家庭内別居は、夫婦関係にどのような影響を与え、最終的にどのような結末を迎えるのでしょうか。
家庭内別居の行く末として考えられるパターンは、主に次の3つです。
関係を修復する
家庭内別居状態になっても、夫婦双方の意識が変わることで、関係を修復できる場合があります。家庭内別居を解消するきっかけは夫婦によってさまざまですが、相手に対して関心を持ち、気長に対話を続けることが関係修復につながりやすいようです。
ささいな会話でも続くようになれば、家庭内別居の行く末にも希望が持てるでしょう。冷却期間を経て、改めてお互いの存在の大切さに気づく夫婦も少なくありません。

夫婦喧嘩から家庭内別居になり、食事も洗濯も別々に。最低限の会話しかない生活にすぐ疲れてしまいました。気まずい空気に耐えられず自分から謝りに行き、何度か繰り返して仲直りできました。(40代女性)
どちらかが家を出て別居する
気持ちが冷め切った家庭内別居中の夫婦は、ちょっとした出来事をきっかけに本格的な別居へと移行してしまうケースがあります。お互いの存在を無視していても、同居することで感じるさまざまなストレスに耐えられず、どちらかが家を出てしまうのです。
また、家庭内別居中にどちらかが別の人へ愛情を求め、不倫や浮気に発展してしまうケースもあります。配偶者以外との関係が発覚した場合、同居を続けることが心理的に困難になり、ただちに完全な別居を決意する人も少なくありません。



家庭内別居中でも家族だからと、腹が立つことがあっても見逃してきました。でも浮気まで許せるはずがありません!私が出ていくはずがないと思っていたようですが、何も告げずに家を出ました。(30代女性)
離婚する
家庭内別居が続くと、相手への関心がますます薄れ、最終的に離婚という結末を迎えるケースは珍しくありません。家庭内別居では相手と過ごす時間が減る分、夫婦の行く末について冷静に考える余裕が生まれます。その結果、改善が見込めないと判断し、離婚を決意する人もいるのです。
子供のために離婚ではなく家庭内別居を選択する夫婦もいますが、子供が成長して独立すると、夫婦が同居する理由が失われてしまいます。長年の家庭内別居の末に、熟年離婚を切り出されるケースも増えています。



価値観の違いから夫婦関係が悪化し、現在家庭内別居中です。会話もスキンシップもない泥沼状態で、これ以上は時間の無駄としか思えません。さっさと離婚して自分のために有意義な時間を過ごしたいです。(40代男性)






家庭内別居はいつまで続く?期間と離婚率のデータ
家庭内別居の行く末は夫婦によってさまざまですが、実際にはどのくらいの期間続き、最終的にどのような結末を迎えるのでしょうか。ここでは、調査データをもとに家庭内別居の実態を見ていきます。


家庭内別居から離婚する夫婦は8割以上
ささいな夫婦喧嘩が原因の家庭内別居であれば、早期に対応して仲直りできれば短期間で解消できるでしょう。しかし、家庭内別居から夫婦仲を改善できるのは実は少数派で、多くの場合は最終的に離婚してしまうのが現実です。
2021年にノマドマーケティングが行った調査によると、家庭内別居を経験した夫婦の83%が離婚を選択しています。特に女性は91%と非常に高い確率で離婚に至っており、家庭内別居のまま夫婦関係を継続するのは簡単ではないことが分かります。
離婚を回避したいのであれば、夫婦関係が悪化した段階で家庭内別居を安易に選択すべきではないといえるでしょう。
家庭内別居から離婚までの期間は?
家庭内別居を何年も続ける夫婦もいますが、同じ調査では、30代・40代の夫婦の半数以上が家庭内別居後、半年から1年以内に離婚したという結果が出ています。
アンケート調査の結果、家庭内別居から離婚に至る場合は以下の期間で離婚する夫婦が多いことが分かりました。
- 1位:別居後5年以内(22%)
- 2位:別居後1年以内(17%)
- 3位:別居後半年以内(15%)
しばらく家庭内別居を続けて5年以内に離婚する割合が最も多い一方、半年~1年以内という短期間で離婚に至ってしまう夫婦も多くなっています。
年代によって離婚までの期間が異なる
注目すべきは、年齢を重ねた夫婦ほど、若い世代に比べて家庭内別居を続ける期間が長いという点です。
- 30~40代:別居から半年~1年以内に離婚する人が多い
- 50~60代:別居から3~5年経ってから離婚するケースが多い
若い世代は比較的早く決断する傾向にあるのに対し、熟年世代は経済的な事情や子供の独立を待つなどの理由から、長期間の家庭内別居を経て離婚に至るケースが多いようです。
出典:ノマドマーケティング株式会社「家庭内別居に関するアンケート」(2021年)
家庭内別居から離婚はできる?法的な注意点
家庭内別居の状態が続き、離婚を考え始めたとき、法的にはどのような手続きが必要になるのでしょうか。ここでは、家庭内別居が離婚理由として認められるかどうか、また離婚を進める際の注意点について解説します。


家庭内別居は離婚理由として認められる?
夫と妻の両方が合意していれば、家庭内別居などの離婚理由に関わらず離婚が可能です(協議離婚)。しかし、相手の合意が得られず離婚調停や離婚裁判になった場合、家庭内別居だけでは離婚理由として認められない可能性があります。
離婚裁判では、民法で定められている「法定離婚事由」に当てはまる事情があり、夫婦関係が破綻していると認められると、相手の合意がなくても離婚できます。
【民法第770条 法定離婚事由】
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生命が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
完全な別居と違い、家庭内別居は同じ家で暮らしているため、他に明確な理由がない場合、夫婦関係が破綻していると判断されにくいのが実情です。ただし、長期間にわたって会話がない、家事や育児を分担していない、生活費を渡していないなど、夫婦としての協力義務が果たされていない証拠があれば、「婚姻を継続し難い重大な事由」として認められる可能性があります。
家庭内別居中の不倫・浮気は離婚理由になる
家庭内別居中であっても、婚姻関係にある限り、浮気や不倫は法定離婚事由の一つである「不貞行為」とみなされます。
相手が浮気や不倫をしている場合、その証拠を確保できれば、相手の合意がなくても裁判で離婚できる可能性が高まります。また、不貞行為を理由に慰謝料を請求することも可能です。
家庭内別居中でも浮気・不倫は禁物
一方で、家庭内別居中だからといって自分が浮気や不倫をしてしまうと、離婚事由の原因をつくった「有責配偶者」となってしまいます。
有責配偶者からは原則として離婚を求めることができません。さらに、相手から慰謝料を請求される可能性もあります。
自分では夫婦関係が破綻していると考えていても、法的には婚姻関係が継続している以上、軽率な浮気や不倫は禁物です。離婚を進める際に不利な立場に立たされることになりかねません。


家庭内別居から夫婦関係を修復する方法
家庭内別居状態から再び夫婦の愛情を取り戻すのは簡単ではありません。しかし、自分から変わろうとする意識を持ち、時間をかけて取り組めば、夫婦関係の破綻を回避できる可能性があります。


不仲の原因を冷静に振り返る
夫婦関係の修復に向けて行動する前に、なぜ現在のような不仲になってしまったのか、原因について冷静に考える必要があります。家庭内別居は相手から精神的に距離を置ける分、自分や相手の状況を客観的に把握しやすい状態です。
夫婦が不仲になった原因は、決定的な夫婦喧嘩のように特定が容易な場合もあれば、日常の小さな不満の蓄積など一つに絞れないこともあります。まずは紙に書き出すなどして、感情的にならず事実ベースで整理してみましょう。
相手に歩み寄る姿勢を持つ
家庭内別居中の夫婦は、相手に対して何かしらの不満を抱いている場合がほとんどです。相手へ一方的に不満や要求を伝える前に、自分で譲歩できる点がないか考えてみましょう。
育児の負担が大きいなら、配偶者ではなく子育て支援サービスを利用するのも解決法の一つです。相手に期待し過ぎず、完璧を求めない姿勢で接することが、関係改善の第一歩となります。
相手の長所に目を向ける
長年一緒に暮らしていると、つい相手の欠点ばかりが気になってしまいます。夫婦関係を修復したいなら、ネガティブな気分になる短所よりも、相手の良いところを見つけるよう意識しましょう。
ささいなことでも相手の長所を褒めたり感謝を伝えたりすると、相手との距離を縮められる可能性が高まります。「ありがとう」「助かった」といった簡単な言葉でも、関係改善のきっかけになります。
夫婦カウンセリングを受ける
家庭内別居にまで至った夫婦関係は、当人同士だけでは解決が難しい場合も少なくありません。そのような場合は、夫婦カウンセラーや臨床心理士などの専門家に相談することをおすすめします。
夫婦カウンセリングでは、第三者の専門家が客観的な立場から夫婦の問題を整理し、コミュニケーションの改善方法や具体的な解決策を提案してくれます。早期に専門家の力を借りることで、さらなる関係悪化を防ぎ、新たな解決の糸口が見つかるかもしれません。


家庭内別居から離婚を決意したときの準備
家庭内別居を経験して、離婚を決意したら、離婚の手続きや離婚後の生活に向けて準備を始めましょう。事前にしっかりと準備しておくことで、離婚の手続きをスムーズに進められます。


夫婦関係破綻の証拠を集めておく
離婚裁判では、同居したままでは離婚理由に必要な夫婦関係の破綻が認められにくいため、相手が合意しない限り離婚できない場合があります。そこで、同居していても夫婦関係が破綻していることを示す証拠を残しておきましょう。
別居以外にも、協力し合って生活するという夫婦の義務が果たされていない場合、夫婦関係の破綻として認められることがあります。たとえば、特別な理由がないのに生活費を渡さない、家事や育児をしないといった理由が当てはまります。家計簿や日記などで記録を細かく残しておくと、裁判に有利な証拠として役立つでしょう。
このほかに、DVやモラハラ、浮気など、家庭内別居よりも認められやすい離婚事由の証拠があれば、離婚裁判においてさらに有利に働きます。
経済的な自立を始める
相手の収入に依存したままの状態だと、生活のために離婚したくてもできない場合があります。また、離婚手続きを進める中で、弁護士への相談料や別居にかかる費用などさまざまな出費も予想されます。離婚を決意したら、離婚後に自立して生活するためにも、十分な収入が得られる方法を見つけましょう。
専業主婦の場合は、まずパートやアルバイトから始めて徐々に収入を増やす、資格取得を目指すなど、計画的に準備を進めることが大切です。
可能であれば家を出て別居する
家庭内別居に比べて、完全な別居状態は夫婦関係の破綻として認められやすいため、可能であれば早めに別居するとよいでしょう。別居することで、愛情がない相手と同居するストレスから解放されるというメリットもあります。
ただし、別居する際は住民票の移動や生活費(婚姻費用)の請求など、注意すべき点もあります。事前に弁護士に相談しておくと安心です。
弁護士に相談する
離婚を決意したら、できるだけ早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。離婚問題に詳しい弁護士に相談することで、法的に有利な進め方や注意点を知ることができます。
【弁護士相談のメリット】
- 法的に有効な証拠の集め方がわかる
- 慰謝料や財産分与の相場を把握できる
- 親権や養育費について適切なアドバイスが受けられる
- 相手との交渉を代理してもらえる
- 離婚調停や裁判の手続きをサポートしてもらえる
離婚は法的な知識が必要な場面が多く、自己判断で進めると不利な条件で合意してしまう可能性もあります。早めに相談することで、より有利な条件での離婚を実現できるでしょう。
初回相談は無料で受け付けている法律事務所も多いため、まずは気軽に相談してみることをおすすめします。
ADR(裁判外紛争解決手続)を検討する
離婚の方法は、裁判だけではありません。ADR(裁判外紛争解決手続)は、裁判所を通さずに、第三者の専門家が仲介して話し合いによる解決を目指す手続きです。
ADRには、弁護士会が運営する「仲裁センター」、法務大臣の認証を受けた民間の「認証ADR機関」などがあります。離婚問題に特化したADR機関も増えており、家庭内別居からの離婚にも対応しています。
【ADRのメリット】
- 双方弁護士に依頼するよりも費用を抑えられる
- 柔軟な解決策を話し合いで決められる
- 裁判のような対立構造にならず、関係が悪化しにくい
特に、相手が離婚に合意しているものの条件面で折り合いがつかない場合や、裁判まで発展させたくない場合には、ADRによる話し合いでの柔軟な解決が有効です。
ただし、相手がADRへの参加を拒否した場合は成立しないため、その場合は調停や裁判を検討する必要があります。


【Q&A】家庭内別居の行く末についてよくある質問
Q. 家庭内別居中に相手が出ていった場合、婚姻費用は請求できますか?
家庭内別居中に相手が家を出て別居状態になった場合、収入の多い方が少ない方に対して生活費(婚姻費用)を支払う義務があります。婚姻関係が継続している限り、別居していても婚姻費用の請求は可能です。請求する際は、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てることができます。
Q. 家庭内別居が子供に与える影響は?
家庭内別居は、両親の冷たい雰囲気や会話のない家庭環境により、子供に心理的なストレスを与える可能性があります。子供は敏感に家庭の空気を感じ取り、不安や自己肯定感の低下を招くことがあるため注意が必要です。子供のためを思って家庭内別居を選択する場合でも、子供の様子を注意深く観察し、必要に応じてスクールカウンセラーなどに相談しましょう。
Q. 家庭内別居から調停を申し立てることはできますか?
家庭内別居の状態でも、離婚調停や婚姻費用分担請求調停を家庭裁判所に申し立てることは可能です。同居していても夫婦関係が破綻している事実があれば、調停で話し合うことができます。ただし、調停で離婚が認められるかどうかは、夫婦関係の破綻を示す証拠の有無や相手の意向によって異なります。
Q. 家庭内別居中に生活費をもらえない場合はどうすればいい?
夫婦には婚姻費用分担義務があり、家庭内別居中であっても収入の多い方が少ない方に生活費を渡す義務があります。相手が生活費を渡さない場合は、まず話し合いを求め、それでも改善されなければ家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てましょう。生活費を渡さない事実は、夫婦関係破綻の証拠としても有効です。
Q. 家庭内別居の状態で新しいパートナーと交際するのは問題ですか?
家庭内別居中であっても、法的には婚姻関係が継続しているため、新しいパートナーとの交際は不貞行為とみなされる可能性があります。不貞行為が発覚すると、離婚訴訟で有責配偶者となり、自分から離婚を求めることが困難になります。また、相手から慰謝料を請求されるリスクもあるため、正式に離婚が成立するまでは新しい交際は控えるべきです。
家庭内別居の行く末は早めの決断と行動が重要
家庭内別居を経験した夫婦の83%が最終的に離婚を選択しており、多くの場合は数年以内に離婚や別居に至ります。長期間、夫婦の会話がない状態が続けば、相手から離婚を切り出される可能性も高まるでしょう。
関係修復を望むなら、夫婦カウンセラーなどの専門家に早めに相談することをおすすめします。一方、離婚を決意した場合は、弁護士への相談や証拠集め、経済的自立の準備を計画的に進めましょう。ADR(裁判外紛争解決手続)による話し合いでの解決も選択肢の一つです。
家庭内別居の行く末は、修復するにしても離婚するにしても、早めの決断と適切な専門家のサポートが重要です。
