結婚前は夫のことを「金銭感覚の優れた人だ」と思っていたのに、結婚してみると倹約家どころか、とんでもないケチで「旦那への愛情も冷めた」と言う妻がいます。たまには贅沢もしないとつまらないという女性も多いでしょう。「ケチな旦那」に冷めたときの対処法を紹介します。
この記事でわかること
・ケチな夫の特徴と心理
・ケチな夫への具体的な対処法
・離婚の可能性と法的判断
加藤 惇/東日本総合 法律会計事務所(第一東京弁護士会所属)
ホームページ:https://ejla.or.jp/
将来を考えた時「人を助けることができる存在になりたい」という自分の想いに気付き、経済学部から法科大学院に進学して弁護士に。
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「ケチな旦那がつまらない」と愛情も冷めたら…
結婚前は「無駄遣いもせず、しっかり貯蓄もしている堅実な男性」だと思っていたのに、実際はただのケチで、「旦那には幻滅してしまった」と嘆く妻がいます。たまには夫婦でちょっとした贅沢も楽しみたいのに、「お金と時間の無駄だ」などと言われ続けるとストレスが溜まり、愛情も冷めてしまうこともあるでしょう。
果たして、たまには贅沢もしたい妻は「ケチな旦那」と折り合うことができるのでしょうか。金銭面で口うるさい夫は何を考え、どのような心理状態なのか、そして、どのように対処すればいいのかを説明します。



妻が冷めるケチな夫の特徴とは?
妻が冷めてしまうほどのケチとは、どのような行動を指すのでしょうか。無駄遣いをしない、支出をきっちり管理するという程度では、妻に「ケチな旦那」と嫌われてしまうことはないはずです。「ケチ」と言われかねない主な行動を紹介します。

必要なものを買い渋る
生活していると、どうしても買わなければならないもの、お金を出さなければならないときがありますが、ケチな夫はそうしたものにもお金を出したがりません。特に妻や子供など自分以外への出費を嫌がり、我慢させようとする傾向があります。
・子供の学用品を買い渋る
・子供に習い事をさせたがらない
・プレゼントを買いたがらない
・妻の化粧品代や美容院の費用は無駄だと思っている
できる限り安く購入する
買い物をするときは必ず値引きされているものや、割引クーポンが使えるものを選び、できるかぎり安く物を買おうとするのも、ケチな夫の特徴です。持っていたクーポンなどの期限が切れていると、非常に悔しがり不機嫌になります。
・大きな買い物をするときは必ず値引きを要求する
・クーポンを大切に持っていて必ず使う
・スーパーでは値引き商品を選ぶ
自分のお金を使いたがらない
ケチな夫は自分のお金はできるだけ使いたくないと考えています。特に付き合いなど自分以外への出費を嫌い、決して他人におごったりしないのが特徴です。複数人で会食するときは、相手が女性だろうが部下だろうが、きっちり割り勘にします。
・デートや部下との食事でも必ず割り勘にする
・会社の飲み会には参加しない
・プライベートな外食を会社の経費で落とす
・おごってもらえるときは贅沢をする
安く済ませるための手間や労力を惜しまない
ケチな夫は安く物を手に入れたり、お金を浮かせたりするための手間や労力を惜しみません。手作りできそうな物は自分で作り、安い買い物ができるのなら、時間をかけてでも遠くまで出かけます。もちろん、交通費を浮かせられるよう、できるだけ歩きます。
・既製品を買わずにDIYで済ませる
・交通費を出し渋って歩く
・ペットボトルは買わずに水筒を持参する
・時間をかけてでも、一番安い店を探す
ケチな夫の心理とは?何を考えている?
自分のお金を使いたがらず、お金の使い方に口うるさいケチな夫は、いったい何を考えているのでしょうか。ケチな行動の裏側にある考え方や心理状態について説明します。

収入の少なさを不安に感じている
ケチな男性は自分の収入が少ないことに不安を感じている可能性があります。給与の中から、必要な生活費だけを妻に渡している男性に、こうしたケースがみられます。もしかすると、妻が思っているより収入額が少ないのに、夫は正直に言い出せないのかもしれません。
不安を抱えていると、人はイライラしがちです。そのうえ、自分は節約して我慢しているのに、妻は何も知らずに贅沢ばかりしていると考えている可能性があります。そのような心理状態になると、妻に八つ当たりをしてストレスを発散しようとすることもあります。
老後の家計を心配している
ケチな夫は、老後のことを考えて貯蓄をしたいのに、思うように貯蓄が増えないため、将来を心配しているのかもしれません。夫婦で将来設計を共有せず、どちらかが楽観的に考える一方、相手が悲観的になると家計をめぐってぎくしゃくするようになります。
夫はイソップ童話のアリとキリギリスの話のように、妻はキリギリスで自分はアリだと思っている可能性があります。そして、妻がこのままの生活を続けていると、自分が一生懸命蓄えている分まで食い尽くされてしまうとまで考えているのかもしれません。妻も貯蓄に協力すると、夫も少しは安心してケチな言動も控えめになるでしょう。
常に得をしていたい
ケチな夫は損得勘定で物事を考え、常に得をして、損をしたくないと考えているのかもしれません。そうした夫は物を買うときに、損をするかもしれないと考えて購入をためらいます。そして、得をするにはどうすればいいのかを考えます。
また、ケチな夫は得する機会を逃しただけで損をしたような気分になります。使おうとした割引クーポンの期限が切れていたときや、買った後で同じ商品を安く売っている店を見つけたときなどがそうです。こうした行動が、妻には物を買い渋っているように見えます。
自分が稼いだお金を勝手に使われたくないと思っている
ケチな夫の中には、自分が稼いだ金は全て自分のものだと思っている人がいます。こうした考えには2通りのタイプがあって、1つは自分の努力だけでお金を稼いでいると思っているタイプです。このタイプの夫は、妻が家事をするのは当たり前だと考えていて、妻に支えられていることに思いが至りません。だから「妻には自由にお金を使う権利はない」と思っています。
もう一つのタイプの夫は、お金を稼ぐ自分は妻より立場が上の人間だと思っています。このため、自分が稼いだお金を、自分より下の存在である妻が勝手に使うのは許されないと考えるのです。こうした夫は、普段でも自分が優位な立場であることを誇示しようと妻を責めることがあります。モラハラをしがちなタイプといえるでしょう。

ケチな夫に冷めたときの対処法は?
ケチな夫に妻が冷めてしまったときは、どうすればいいのでしょうか。夫が現在の家計や将来に不安を感じているのなら、妻の対応しだいで不安を和らげるかもしれません。ただ、夫がモラハラ気質の場合は、対応が難しくなります。ケチな夫への対処法について説明します。

家計について話し合う
夫が妻にお金の使い方についてあれこれ言う原因は、金銭感覚の違いもありますが、家計や将来設計についての考え方のずれにあるのかもしれません。二人でよく話し合うことで、こうしたずれを解消できる可能性があります。
話し合いをするときは自分の意見を一方的に押し付けるのではなく、相手の意見にもよく耳を傾けましょう。夫の考えを頭ごなしに否定してはいけません。逆に夫が話を聞こうとしないときは「私の考えも聞いて」とはっきり言いましょう。夫の考えを理解し、お互い歩み寄ることができれば、お金の使い道でぎくしゃくすることも減るはずです。
互いの財布を分ける
お金の使い方について、歩み寄れない部分がある場合は、夫婦で別の財布にするのも一つの方法です。お互いに毎月、生活費としてお金を出し合い、それ以外のお金は自由に使えるようにします。専業主婦の場合は難しいかもしれませんが、共働き夫婦の場合は、有効かもしれません。
妻の収入によっては自由に使えるお金がそれほど多くならないかもしれませんが、その分、収入アップややりくりに張り合いがでてきます。自分で稼いだり浮かしたお金であれば、夫も文句を言いにくいでしょう。
自分の自由になるお金を稼ぐ
専業主婦の場合は、自分で自由に使えるお金を稼ぐ方法を考えてはどうでしょうか。各企業が発行しているポイントを集め、積極的にキャンペーンや懸賞に応募すれば、自由になるお金も少しずつ増えていくかもしれません。
また、最近はネットを活用して稼ぐ方法もあります。手芸などの作品を販売できるサイトもありますし、オンラインで仕事もできます。自分の趣味や資格、経験などを生かして稼げる方法を探してみてはどうでしょうか。思わぬ収入が得られるかもしれません。
夫婦カウンセリングを受ける
夫婦で話し合おうとしても感情的になってしまったり、話し合いの場を持つこと自体が難しい場合は、夫婦カウンセリングを受けることを検討してみましょう。第三者である専門家が間に入ることで、冷静に問題を整理し、お互いの本音を伝え合える環境が整います。
夫婦カウンセリングでは、カウンセラーが中立的な立場で双方の話を聞き、金銭感覚の違いがどこから生まれているのか、その根本原因を一緒に探ります。夫がケチになってしまう背景には、幼少期の経験や将来への過度な不安など、本人も気づいていない理由が隠れていることがあります。
カウンセリングを受ける際は、「あなたが問題だから」という姿勢ではなく、「二人の関係をより良くするため」という前向きな姿勢で提案することが大切です。「専門家の意見を聞いてみよう」「より良い家計管理の方法を見つけよう」と伝えることで、夫も受け入れやすくなるでしょう。

離婚や別居を切り出す
夫がモラハラ気質で、妻を見下したり束縛しようとしている場合、話し合いだけで状況を改善するのは困難です。妻が本気で行動を起こさない限り、夫が考えを改める可能性は低いでしょう。
別居や離婚を切り出すことは、最終手段として有効な方法です。「もっと生活費を渡してほしい」「自由に使えるお金を増やしてほしい」と具体的に要求を伝えましょう。本気度が伝われば、夫が話し合いに応じ、関係修復の可能性が生まれるかもしれません。
この段階では、弁護士に相談することも検討しましょう。生活費の不足が「悪意の遺棄」に該当するか、離婚した場合の財産分与や慰謝料請求の見込みなど、専門的なアドバイスを受けることができます。弁護士を通じて交渉することで、より有利な条件を引き出せる可能性もあります。


金銭感覚の違いを理由にケチな夫と離婚できる?
金銭感覚の違いを理由にケチな夫と離婚できるのでしょうか。ケチな夫との離婚を考えたときに大切なポイントや、離婚までの手続きについて紹介します。

配偶者が同意すれば、ケチを理由とした離婚も可能
離婚は当人同士の合意があれば、どんな理由でも離婚できます。夫婦の話し合い(協議)で離婚することを「協議離婚」と言いますが、離婚で最も多いのがこの形です。ただ、どちらか一方が離婚を拒否したり、離婚の条件で折り合わなければ、家庭裁判所を介した手続きが必要になります。
家庭裁判所といっても、いきなり離婚裁判を起こすのではなく、裁判の前に「離婚調停」を申し立てるのがルールです。これを「調停前置主義」といいます。離婚調停では、家庭裁判所の調停委員を介して、離婚について夫婦が協議を行います。この調停で双方が離婚に合意すれば離婚できます。
調停でも合意できなければ、離婚裁判に進み、裁判所の判断を仰ぐことになります。裁判所が離婚を認めれば、相手が合意しなくても離婚できます。しかし、裁判では離婚もやむを得ない理由があることと、そのことで夫婦関係が破綻していることを立証しなければなりません。
ケチが「悪意の遺棄」と判断され離婚が認められることも
離婚裁判では「夫がケチ」「金銭感覚が合わない」といった理由だけで離婚が認められることは、ほぼありません。ケチが夫婦関係を損なうほど深刻だと証明する必要があります。このとき、問題となるのはケチの程度が「配偶者を悪意で遺棄する」もしくは、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかです。
「配偶者を悪意で遺棄する(悪意の遺棄)」とは、民法の「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」という条文に、正当な理由がないのに反することです。具体的には、自由に使える生活費を渡さない、過度の倹約を強要する、働こうとしないなどの行為が悪意の遺棄と判断される可能性があります。
また、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」とは、夫婦関係が破綻し関係修復が不可能な状態にあるという意味です。これは、夫婦ごとに個別の事情を判断することになりますが、夫が金銭的に締め付けるため、食費もままならない、子供の学用品も買ってやれないなど、生活に著しい支障が生じている場合は、離婚が認められることがあります。

離婚事由があるかどうか、どのような対応をとるのが適切か、自分で判断することは容易ではありません。早めに弁護士に相談して、自分にはどのような選択肢を取ることができるか、探していくのが良いでしょう。
ケチな夫はモラハラ気質かどうかを見極めよう
ケチが夫にお金の使い道にうるさいのには必ず理由があります。金銭面の不安を抱えているのかもしれませんし、金銭的に締め上げることで妻を支配しようとしているのかもしれません。特に妻を支配しようとするモラハラ夫は対応がやっかいです。夫がモラハラ気質なのかどうかを見極めて対応を考えましょう。
夫がモラハラ気質のときは、別居や離婚も視野に入れて対応することが必要です。夫との協議や裁判には法律の知識も必要になります。夫婦関係に詳しい弁護士に早めに相談しましょう。