
離婚時に必ず決めなければならない親権。2026年4月からは共同親権制度が施行され、選択肢が広がります。この記事では、親権の基本的な知識から、親権者を決める方法、裁判所が重視する判断基準、離婚後のトラブル対応まで、わかりやすく解説します。子どもの未来のために、正しい知識を身につけましょう。
この記事でわかること
・離婚時の親権者の決め方と2026年施行の共同親権制度
・親権争いで裁判所が重視する判断基準
・親権者変更の手続きと離婚後のトラブル対処法
折田 裕彦/法律事務所アスコープ 東京オフィス(第一東京弁護士会所属)
所属弁護士数30名を超える法律事務所アスコープの共同代表パートナー。都内を中心に地方展開を手がけ、紹介・リピーターを呼ぶ「圧倒的な実績と安心感」で信頼を築く。
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親権とは?基本的な権利と責任
親権は未成年の子どもの生活を守り、成長を支えるために不可欠な権利と責任です。
法律上、親権者は子どもの身の回りの世話や教育を行い、さらに子どもの財産を管理する役割を担います。これにはしつけや居所指定、職業許可など、多岐にわたる権限が含まれています。日常的な生活の中で子どもが安全に育つためにも、親権者の責任は極めて重要です。
親権を行使するにあたっては、単に子どもを守るだけでなく、子ども自身の成長を促すためのサポートも求められます。精神面や学業面、社会性の形成など、その責任は多方面にわたります。親権者がどのような姿勢で子どもを支えられるかが、将来の子どもの生活に大きく影響します。
離婚時には、どちらが親権を持つかを法律上で明確に定めなければなりません。単独親権であれば親のどちらかが全責任を負い、共同親権であれば両親が協力しながら子どもを育てます。最適な選択をするには、子どもの生活環境や親の負担バランスを考慮することが大切です。

親権を構成する身上監護権と財産管理権
親権には、大きく身上監護権と財産管理権の二つが含まれます。身上監護権とは、子どもの衣食住や教育などの生活面に関わる監護を行う権利であり、日常的に子どもの世話をすることが主な役割です。
財産管理権は、子どもが将来的に相続する財産や、子ども名義の預貯金などを管理する権利を指します。子どものためになる資産形成を考え、無用なトラブルを避けるためにも適切な運用が求められます。
これら二つの権利は、子どもを健全に育てるための基盤とも言えます。親が別居している場合でも、どちらがどのように責任を負うかをしっかり話し合い、お互いの生活や子どもの状況に合った形で親権を運用することが重要です。

離婚後共同親権とは?

離婚後共同親権とは、離婚した後も父母の両方が子どもの親権を持ち続ける制度です。
これまで日本では、婚姻中は父母が共同で親権を持ちますが、離婚後は必ずどちらか一方を親権者と定める単独親権が原則でした。しかし2024年5月に民法が改正され、2026年4月からは離婚後も父母の協議によって単独親権か共同親権かを選択できるようになります。
共同親権を選択した場合、父母双方が親権者として子どもの養育や教育、財産管理に関わり続けることができます。ただし、日常的な食事や習い事などの「監護及び教育に関する日常の行為」や、緊急の医療行為については、単独で親権を行使できるとされています。
一方で、子どもの進学先の決定や転居、重要な財産管理など、子どもの将来に大きく影響する事項については、原則として父母双方の同意が必要となります。父母が協力して子育てに関わることで、子どもが両親から愛されていると実感でき、健やかな成長につながることが期待されています。
協議が整わない場合や父母間でDV・虐待のおそれがある場合は、家庭裁判所が個別の事情を考慮し、子どもの利益の観点から単独親権か共同親権かを判断します。法改正では、DVや虐待があると裁判所が認めた場合は必ず単独親権としなければならないと定められており、子どもの安全を最優先する仕組みが設けられています。

離婚時の親権者を決める方法

離婚時には、未成年の子どもがいる場合、必ず親権者を定めなければ離婚届は受理されません。
2026年4月の法改正施行後は、父母の協議によって単独親権か共同親権かを選択できるようになります。親権者の決定方法は、離婚の種類によって異なります。
協議離婚の場合
協議離婚では、父母が話し合いによって親権者を決めます。単独親権とするか共同親権とするかも、父母の合意によって選択できます。
話し合いで合意に至った場合は、離婚届の親権者欄に記入して提出します。単独親権であれば父または母のどちらか一方の名前を、共同親権であれば両方の名前を記載することになります。
話し合いがまとまらない場合や、冷静な協議が難しい場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。調停委員が間に入り、双方の意見を聞きながら、子どもにとって最善の選択を目指して話し合いを進めます。
調停離婚・審判離婚の場合
協議で合意できない場合は、家庭裁判所で調停を行います。調停では、調停委員が父母双方の事情を聞き取り、子どもの年齢や生活環境、父母の監護能力などを考慮しながら、合意形成を支援します。
調停でも合意に至らない場合は、家庭裁判所が審判によって親権者を決定します。裁判所は、子どもの利益を最優先に考え、父母それぞれの監護実績、経済状況、子どもの意思、DVや虐待の有無などを総合的に判断します。
特にDVや虐待のおそれがある場合、または父母が共同して親権を行使することが困難であると認められる場合は、必ず単独親権と定められます。
裁判離婚の場合
離婚訴訟では、離婚の可否と同時に親権者についても裁判所が判断します。裁判所は、家庭裁判所調査官による調査報告書や、提出された証拠をもとに、子どもにとって最も適切な親権の形を決定します。
いずれの方法でも、子どもの利益を最優先に考えることが大原則です。父母の都合だけでなく、子どもの年齢、意思、生活の安定性などを十分に考慮して親権者を決めることが重要です。
親権が争われる際に考慮される要素

親権が争いになる場合、裁判所や調停では子どもの将来を見据えた多角的な審査が行われます。
親権争いでは感情的対立が激しくなるケースも少なくありません。そのため裁判所は客観的な視点から、子どもの最善の利益を踏まえて判断します。具体的には母性優先の原則や監護継続性の原則など、複数の基準が存在します。
争いが長引くと、子どもの心身の負担や生活リズムの乱れにつながりやすいため、冷静な対応が求められます。一方で誤った情報や無理な主張を行えば、大きく不利になることもあるので注意が必要です。
それぞれの要素を理解した上で、自らの監護実績や環境の整備状況をしっかりと示すことが、親権を獲得するために重要です。親だけでなく子どもの声にも耳を傾け、将来を見据えた判断を行う意識が求められます。
母性優先の原則と父親が不利とされる背景
乳幼児に対しては、母親の影響が大きいという考えから、母性優先の原則が採られがちです。特に授乳や夜間の世話など、母親が中心となって行われるケアが重視されます。
結果的に、父親は母親ほど育児実績を示せないケースが多く、不利になる場合があるとされています。しかし最近では父親が積極的に育児に関わっている家庭も増えており、実際の監護実績が評価されやすい環境に変わりつつあります。
母性優先の原則を過度に重視するのではなく、あくまで子どもの最適な生活環境を見極める視点が求められています。父親が十分に家庭を支えられる証拠を提示できれば、決して不利とは限りません。
監護継続性の原則と監護実績
監護継続性の原則とは、子どもがこれまで慣れ親しんできた生活環境や人間関係をなるべく維持することが大切だとする考え方です。子どもにとって安心感のある場所での生活が続くことで、精神的安定が保たれます。
親権を主張する側は、どれだけ子どもと共に生活してきたかという監護実績を証明することが重要になります。日常的な保育園の送迎や食事の用意など、具体的にどのように子どもの生活を支えてきたのかを示す必要があります。
引っ越しや生活環境の変化が大きい場合、子どもがストレスを感じやすくなるため、裁判所はより慎重に判断を下すことがあります。子どもの成長を最優先に考えたとき、継続性の高い環境を用意できるかどうかがポイントとなります。
兄弟姉妹不分離・子どもの意思・面会交流の重要性
兄弟姉妹がいる場合は、できるだけ同じ環境で育てることが望ましいとされています。子ども同士が助け合い、精神的安定を保つ上でも、兄弟姉妹を分けるかどうかは非常に大きな問題です。
また、子どもがある程度の年齢に達している場合、その意思を尊重することも重要視されます。自分の生活や進路をどう考えるかという観点で、子どもの声を無視するのは好ましくありません。
面会交流は、親権を持たない側の親と子どもの関係維持のために大切です。子どもが両親からの愛情を感じ、精神的に安定して成長できるよう、適切な頻度や内容で行うことが求められます。

親権で争う可能性がある場合は弁護士に相談を

親権をめぐる争いが予想される場合、早い段階で弁護士に相談することが重要です。
親権争いは感情的になりやすく、当事者同士の話し合いだけでは解決が難しいケースが多くあります。弁護士に相談することで、客観的な視点から自分の状況を分析し、親権獲得に向けて有利に進めるための具体的なアドバイスを受けることができます。
特に監護実績の証拠集めや、調停・審判での主張の組み立て方については、法的な知識と経験が不可欠です。日常的な育児の記録、保育園や学校との連絡記録、医療機関の受診記録など、どのような証拠を準備すべきかを弁護士が的確に指示してくれます。
親権は子どもの将来に直結する重要な問題です。後悔のない選択をするためにも、専門家である弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
法律事務所アスコープ 東京オフィス・折田 裕彦親権で争いになる可能性がある場合は、単独親権を求める側にとっても、相手方の単独親権主張に備える側にとっても、早期に弁護士へ相談することが極めて重要です。
親権判断では、別居後の監護状況や子どもとの関わり方、生活環境の安定性などが重視されるため、初動対応が結果を左右します。早い段階で相談することで、主張を裏付ける事実整理や証拠の準備、不要な不利を避ける行動選択が可能になります。将来を見据え、戦略的に対応することが重要です。
親権者が決まった後に起こりうるトラブルと変更手続き


親権者が決まった後も、さまざまな事情によってトラブルが発生したり、親権者の変更が必要になったりするケースがあります。
離婚時に決めた親権者が適切に監護を行えなくなったり、子どもの生活環境が大きく変わったりした場合、親権者の変更を検討する必要があります。また、面会交流や養育費の支払いをめぐってトラブルが生じることも少なくありません。
親権者変更は家庭裁判所の許可が必要であり、子どもの利益のために必要があると認められる場合に限り、変更が可能となります。
親権者変更が認められる主なケース
親権者変更が認められるのは、現在の親権者による監護が子どもにとって不利益となる明確な理由がある場合です。
具体的には、親権者が病気や事故で監護能力を失った場合、育児放棄や虐待が認められる場合、親権者の生活環境が著しく悪化した場合などが挙げられます。また、子どもが一定の年齢に達し、自らの意思で変更を希望する場合も考慮されます。
単に「やはり自分が育てたい」という親の都合だけでは、親権者変更は認められません。
親権者変更の手続き
親権者の変更は、必ず家庭裁判所の調停または審判を経る必要があります。当事者同士が合意していても、裁判所の許可なく変更することはできません。
まず家庭裁判所に親権者変更の調停を申し立てます。調停で合意に至れば審判に移行し、裁判所が最終的に変更の可否を判断します。調停が不成立の場合は、自動的に審判手続に移行し、家庭裁判所調査官による調査が行われます。
面会交流や養育費に関するトラブル
親権者が決まった後、面会交流が適切に実施されないトラブルが頻発しています。面会交流は子どもの健全な成長のために重要であり、正当な理由なく拒否することはできません。
養育費の支払いが滞るケースも多く見られます。養育費は親権の有無にかかわらず、親として負担すべき義務です。支払いが滞った場合は、調停や審判を経て取り決めた内容があれば、強制執行による差し押さえも可能です。
これらのトラブルを避けるためには、離婚時に面会交流や養育費について具体的に取り決め、公正証書や調停調書として残しておくことが重要です。




【Q&A】離婚と親権に関するよくある質問
Q. 離婚届に親権者を記載せずに提出することはできますか?
できません。未成年の子どもがいる場合、離婚届には必ず親権者を記載する必要があり、記載がなければ受理されません。親権者が決まっていない状態では、法律上離婚が成立しないため、必ず事前に決めておく必要があります。協議で決まらない場合は、家庭裁判所の調停や審判を利用して親権者を定めてから離婚届を提出します。
Q. 親権を持たない親は子どもに会う権利がないのですか?
いいえ、親権を持たない親にも面会交流の権利があります。面会交流は子どもが両親の愛情を感じながら成長するために重要な権利であり、親権の有無とは別に認められています。
ただし、DVや虐待のおそれがある場合など、子どもの利益を害する場合には制限されることがあります。面会の頻度や方法については、離婚時に具体的に取り決めておくことが望ましいでしょう。


Q. 親権と監護権を分けることはできますか?
できます。親権と監護権を分離し、一方の親が親権者、もう一方の親が監護権者となることも可能です。これにより、実際に子どもと生活する監護権者と、法的な代理権や財産管理権を持つ親権者を分けることができます。
ただし、子どもにとって混乱を招く可能性もあるため、慎重な検討が必要です。実務上は親権と監護権を同一の親が持つケースが一般的です。


Q. 離婚後に親権者が再婚した場合、子どもはどうなりますか?
親権者が再婚しても、親権そのものには影響ありません。ただし、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合は、再婚相手も親権者となります。
養子縁組をすると再婚相手にも法的な親子関係が生じ、扶養義務や相続権が発生します。一方、養子縁組をしなければ、再婚相手と子どもの間に法的な親子関係は発生せず、親権者は実の親のままです。


Q. 共同親権になった場合、子どもの苗字はどうなりますか?
共同親権でも子どもの苗字は父母のどちらか一方の苗字を名乗ることになります。離婚によって親権者が旧姓に戻った場合、子どもの苗字を変更したければ家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立てる必要があります。
共同親権制度が導入されても、子どもが両方の苗字を同時に名乗ることはできず、どちらか一方を選択することになります。苗字の変更は子どもの学校生活などにも影響するため、慎重に判断することが大切です。
子どもの利益を最優先に親権を考えよう
離婚時の親権は、子どもの将来を左右する非常に重要な決定です。2026年4月からは共同親権制度が施行され、離婚後も父母双方が親権を持つ選択肢が加わります。
親権者を決める際には、監護実績、子どもの意思、生活環境の安定性など、さまざまな要素が総合的に判断されます。親の都合や感情ではなく、常に子どもにとって何が最善かという視点で考えることが大切です。
親権争いが予想される場合や、離婚後にトラブルが生じた場合は、早めに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。適切なサポートを受けながら、子どもが健やかに成長できる環境を整えていきましょう。

