カサンドラ症候群になると離婚率が高い?
カサンドラ症候群とは、発達障害の人の家族が、うまくコミュニケーションを取れないことから疲弊して心身に不調を来す状態のことを言います。夫や妻が発達障害で、そのパートナーがカサンドラ症候群になった場合、離婚率が高くなると言われます。
発達障害にもさまざまなタイプがあり、障害の程度も人によって差があるため、本人や周囲の人が発達障害だと気づかず、カサンドラ症候群になった妻や夫のつらさや苦しみが周囲に理解されないこともあります。自分のパートナーが発達障害ではないかと感じたら、カサンドラ症候群について理解し、対処法を知っておくことが大切です。
カサンドラ症候群とは?離婚率との関係は
カサンドラ症候群は正式な病名ではなく、病名としてはうつ病やパニック障害などとなります。夫や妻、子供など発達障害の家族と接しているうちに、こうした症状を発症することを、ギリシャ神話に登場する女性の名前から「カサンドラ症候群」と呼ぶようになりました。病気とまではいえなくても、心身の不調を訴えるケースを含めることもあります。
カサンドラ症候群を引き起こす発達障害とは
発達障害の人には、生まれつきの脳の働き方の違いによって、特徴的な行動や感情が現れます。それが周囲には奇妙な行動や協調性の欠如に映るため、本人が生きづらさを感じていることもあります。苦手なことと得意なことの差が大きく、芸術や音楽など特定の分野で並外れた能力を示すことがあるのも特徴です。
発達障害は、大きく自閉スペクトラム症と注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)に分けられ、チック症や吃音なども含まれます。発達障害がある人は、多くの場合、人とのコミュニケーションが苦手です。こだわりが強く、関心の無い事には全く興味を示さない人もいます。このため、周囲から「変わり者」「自分勝手」と見られることもあります。
米国の調査では離婚率が約8割?
発達障害の人のコミュニケーションが苦手な点は、結婚生活の支障になることがあります。夫や妻が悩みを抱えていても、それに共感できず、そっけない態度を取る人がいる一方で、相談事をされても理解できず、混乱する人もいます。結婚前はいつも落ち着いて冷静な人だと思っていたら、軽度の発達障害だったというケースも少なくありません。
互いに理解し合い、協力し合うのが夫婦ですが、コミュニケーションが苦手な発達障害の人には、それが困難なことがあります。実際、アメリカでは発達障害の人の約8割が離婚しているという調査結果もあるようです。離婚の理由はさまざまですが、カサンドラ症候群になる人が多いのも離婚率の高さの要因と思われます。
カサンドラ症候群になる原因とは
夫や妻が発達障害だと、なぜカサンドラ症候群のような症状が現れやすくなるのでしょうか。カサンドラ症候群になりやすいケースと合わせて説明します。
発達障害のパートナーと意思疎通ができない
発達障害の人は、他人とのコミュニケーションが苦手で、普通に会話をしていても、相手の発言の意図が読み取れなかったり、相手が傷つくことを平気で言ってしまったりする傾向があります。特に、自閉スペクトラム症に顕著にみられる傾向です。自閉スペクトラム症は以前、自閉症、アスペルガー症候群などに分けられていました。
コミュニケーションをうまく取れない相手と日常的に接する中でのストレスや、周囲の人に悩みを理解してもらえない孤独感などから、心身が疲弊し気分の落ち込みや体の不調を訴えるようになると考えられています。
家庭内(特に私との会話)では
無関心、無反応、記憶がない、何も感じない、
全てがどうでも良い、が口癖です。
「夫婦って相手が辛い時は労ったり励ましたりするものでしょう?」と言うと、
「そんな話聞いたことがない!くだらない本やネットで見ただけだろう」
と言われました。
Twitterでは、夫の愚痴を書くと「なぜ離婚しないの?」とよく言われましたが、実際に友達や夫を知る人には「なぜ離婚しないの?」なんて言われたことがありません
夫、いい人なのです
私の苦しみは誰にもわかってもらえない
理解されない
カサンドラ症候群は女性に多い?
カサンドラ症候群になる人は女性が多いといわれます。カサンドラ症候群の人や経験者の体験談などを見ると「旦那がアスペルガー(自閉スペクトラム症)」という人が多いようです。これは、自閉症スペクトラム障害が男性に多いためだと考えられています。
また、夫が主に家計を支えている夫婦が多いため、どうしても妻が我慢しがちになることも要因だと思われます。しかし、「妻がアスペルガーで、カサンドラ症候群になった」という夫も少なくありません。男性も、妻とコミュニケーションをうまく図ることができなければ、心身に不調をきたしてしまいます。
カサンドラ症候群の特徴とは
カサンドラ症候群は正式な病名ではなく、診断基準などはありません。病気と診断されなくても、一定の症状が見られればカサンドラ症候群と呼ばれるケースもあります。治療が必要だと判断されたときは、神経症やうつ病、パニック障害などと診断されることが多いようです。
精神的、身体的にさまざまな症状が現れますが、診察では症状だけでなく、夫との関係や家庭環境など総合的に判断されます。カサンドラ症候群が疑われる症状としては、次のようなものがあります。
カサンドラ症候群で現れる身体的症状
ストレスによって引き起こされる症状は人それぞれで、さまざまな形で現れます。発達障害のパートナーとの関係に悩み、特に病気がないのに次のような身体症状があるときは、カサンドラ症候群を疑ってみましょう。
・不眠
・倦怠感
・頭痛・偏頭痛
・腹痛・吐き気
・息苦しさ・呼吸困難
・体重の増加、減少
カサンドラ症候群で現れる精神的症状
強いストレスはさまざまな精神的症状も引き起こします。次の症状が現れたら、原因はともかく精神的に大きなダメージを受けている可能性があります。心療内科や精神科を一度受診してみましょう。
・孤独感・孤立感
・猛烈な不安で落ち着かない
・情緒が不安定
・自分に自信がない・価値のない人間だと考える
・何もやる気が出ない
・不意に悲しくなる・涙が出る
・生きていくのが嫌になる
カサンドラ症候群にならないようパートナーにどう向き合う?
夫や妻が発達障害だった場合、相手とどのように向き合えばいいのでしょうか。発達障害の人と生活するには、発達障害について知ることが大切ですし、コミュニケーションのコツも必要です。専門家に相談しながら少しずつ相手を理解していくことが大切です。
診察を受け対応方法を医師に教わる
もし、発達障害の夫や妻と良好な関係を築き、結婚生活を続けたいと考えているのであれば、夫婦で発達障害についての理解を深めることが大切です。できれば、夫婦で医療機関を受診するのが良いのですが、自分が発達障害であることを受け入れられない人もいます。
夫婦での受診が無理なら、とりあえず一人でも受診して、パートナーの言動についても相談しましょう。結婚生活の継続を望んでいることを話せば、適切な対応についてアドバイスしてもらえるはずです。
相手が理解できないときは諦める
発達障害の人は、他人の気持ちを汲み取るのが難しいため、いくら話をしても理解できないときがあります。こだわりが強い傾向があり、一度思い込むと柔軟に考えを変えることができません。発達障害の人と生活していくときは、諦めて我慢することも必要です。
我慢した後はストレスが溜まらないよう、好きな事をするなどストレス発散の方法も決めておきましょう。
距離を置くことを考える
妻や夫の発達障害が原因で、心身に不調をきたした状態で同居を続けていると、症状が悪化し続けるかもしれません。一度、互いに距離を取って、心身の回復を図ることも必要です。
一時的な別居などで距離を取ったら、相手にも日頃の言動を振り返ってもらいましょう。カウンセラーや弁護士、医師などに間に入ってもらい、話し合いをするのも有効です。それでも、本人が人ごとのような態度を取り続けるのなら、離婚を考えたほうがいいかもしれません。
カサンドラ症候群になったらパートナーと離婚できる?
夫婦のうちどちらか一方が発達障害の場合、離婚率は約8割という調査結果が米国では報告されています。日本では米国ほど離婚率は高くない可能性がありますが、それでもカサンドラ症候群になった人の多くは離婚しているようです。カサンドラ症候群を理由に離婚できるのでしょうか。
あっさり離婚に応じてもらえることも
発達障害の人は他人にあまり興味がなく、人間関係も苦手です。ひょっとすると、既に結婚生活に飽きて、配偶者への関心を失っているかもしれません。離婚を切り出され、あっさりと承諾することもあるようです。
互いに離婚の条件に合意すれば、話し合いだけで離婚できます。これが最も望ましい形でしょう。
発達障害の夫に疲れました。
離婚することになりました。
夫のことは愛しています。
ですがもう限界です。
夫も離婚したいそうです。
裁判では夫婦関係の破綻を立証することが必要
夫が離婚に応じない場合、離婚の調停を裁判所に申し立て、それでも合意できなければ裁判になります。発達障害の人はこだわりが強い傾向があり、なぜ離婚しなければならないのか理解できないことがあるため、離婚の話し合いが進まないことが多いようです。
北松戸ファミリオ法律事務所
離婚自体には応じるものの、養育費や財産分与、子供との面会交流など離婚の条件に強いこだわりを主張して話が進まないこともあります。
裁判で離婚する場合、婚姻関係が既に破綻しており、修復することが不可能であることを裁判所に認めてもらわなければなりません。相手が発達障害であることや、自分がカサンドラ症候群であることは、それ自体では離婚の理由だと基本的に認められません。
このため裁判では、相手の言動に傷つき、悩まされたために心身に不調をきたし、離婚せざるを得ない状況にまで追い込まれたことを証明しなければなりません。そのため、相手の言動を記録しておくことや、医師の診断書を取っておくことなどが必要です。手続きがわからないときは、弁護士などの専門家に相談しましょう。
一緒にいるのが苦痛で実家に帰ってみたりもしましたが、夫は何も気にしていない様子です。 義実家にも相談しましたが無意味でした。
夫は義実家に対して既に心を閉ざしているようで何言われても聞き流している感じです。
最近、私が話していてもそんな感じになってきました。
私はもう愛情がなく離婚したいと伝えても、理解してもらえず俺は好きだ、息子も家もお金もあるから離婚するわけない。妻(私)はどうして変わっちゃったの?と何もわかっていないようです。
カサンドラ症候群で悩んでいたら専門家に相談を
本来、互いに理解しあい、助け合うべき夫婦の間で、うまくコミュケーションを図ることができず、わかりあえないというのはつらいものです。離婚率の高さからわかるように、夫か妻が発達障害の場合、夫婦関係を維持するには努力や我慢も必要になります。
夫の言動や態度に心が傷つき、癒される見込みがないときは、自分の健康や幸せのために離婚も考えましょう。家庭問題に詳しいカウンセラーや弁護士にも相談して、最善の道を選択してください。
北松戸ファミリオ法律事務所(千葉県弁護士会所属)
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